相続税2026年5月3日最終更新: 2026.05.03

この記事の要点

  • 物納制度は相続税法第41条に基づく、延納によっても金銭納付が困難な場合に相続財産そのもので納付できる制度
  • 物納できる財産には順位がある:第1順位(不動産・上場株式・国債・地方債等)、第2順位(非上場株式等)、第3順位(動産)
  • 物納適格財産の要件:管理処分不適格財産(境界不明の土地、共有持分、係争中物件など)でないこと、相続税法施行令第18条で詳細規定
  • 収納価額は原則として相続税の課税価格の基となった価額(時価ではなく評価額)。物納申請書は相続税の納期限までに提出

相続税は金銭による一括納付が原則ですが、相続財産の大半が不動産で現金が乏しい場合、延納制度(分割払い)を使ってもなお納付が困難なケースがあります。そうした場合の最終手段が「物納」です。

物納とは、文字どおり「物」つまり相続財産そのもので相続税を納付する制度で、相続税法第41条に規定されています。本記事では、物納の順位・要件・収納価額・申請手続きを西東京市の専門家が解説します。

相続税の物納制度とは(相続税法第41条)

物納制度は、相続税法第41条第1項に基づき、「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合において、その納付を困難とする金額を限度として」、相続によって取得した財産で相続税を納付できる制度です。

物納は他の税目には存在しない、相続税特有の制度です。これは、相続財産が不動産など現金化しにくい財産で構成されることが多く、納税のために売却を強制すると遺族の生活基盤を失わせる可能性があるためです。

物納の3つの順位

物納に充てることができる財産は、相続税法第41条第2項により、次の3つの順位で定められています。先順位の財産がある場合、後順位の財産は原則として物納に充てることができません。

第1順位:不動産、上場株式、国債、地方債、船舶

不動産(土地・建物)、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等が第1順位です。多くの物納申請はこの第1順位の不動産で行われます。

なお、平成29年度税制改正により、上場株式等が第1順位に加えられるとともに、不動産等のうち「物納劣後財産」(後述)は第1順位の中でも別枠で取り扱われるようになりました。

第2順位:非上場株式等

非上場株式・社債・出資証券などが第2順位です。第1順位の財産がない場合、または第1順位の財産では納付すべき税額に満たない場合に充てることができます。

第3順位:動産

美術品・貴金属・自動車などの動産が第3順位です。実務上、動産による物納は限定的です。

物納できない財産(管理処分不適格財産)

物納に充てる財産であっても、管理または処分が困難な「管理処分不適格財産」は物納に充てられません(相続税法第41条第2項、相続税法施行令第18条)。具体的には次のような財産が該当します。

  • 担保権の設定された不動産(抵当権・根抵当権など)
  • 権利の帰属について係争中の財産
  • 境界が明らかでない土地
  • 共有財産で他の共有者全員が物納申請しないもの
  • 耐用年数経過後の建物で通常の用途に使えないもの
  • 暴力団員等が使用している不動産
  • 借地権の目的となっている土地で借地権者が不明のもの

また「物納劣後財産」(市街化調整区域内の土地、無道路地、接道義務を満たさない土地など)は、他に物納適格財産がない場合に限り物納が認められます。

物納の収納価額

物納財産の収納価額は、相続税法第43条に基づき、原則として「課税価格計算の基礎となった価額」、すなわち相続税評価額となります。

これは時価ではなく評価額である点が重要です。例えば、路線価で評価された土地は時価の約8割程度となるのが一般的なため、市場で売却するよりも物納のほうが有利になるケースもあります(特に時価が下落した不動産)。

ただし、物納許可後に物納財産の状況に著しい変化があった場合は、税務署長が収納価額を改定できる旨が定められています。

物納申請の手続き

申請書類

物納申請には、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長宛に、以下の書類を提出します。

  • 相続税物納申請書
  • 金銭納付を困難とする理由書
  • 物納財産目録
  • 物納手続関係書類(登記事項証明書、公図、地積測量図、境界確認書、物納財産収納手続書類 など)

不動産の場合、境界確定や測量・登記の整備など、提出までの準備に半年以上かかることもあります。

申請期限

物納申請書は、相続税の納期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに提出する必要があります。延納と同じく、期限を過ぎると物納が認められません。

審査期間

物納申請に対する税務署の審査期間は、原則として申請期限から3ヶ月以内です(相続税法第42条)。ただし測量や境界確定が必要な場合などは、最長で9ヶ月まで審査期間が延長されることがあります。

物納から金銭納付への変更

物納の許可を受けた後、または申請中に資金状況が改善した場合、物納から金銭納付(または延納)への変更が認められることがあります。物納許可後1年以内に限り、収納財産の所有権がまだ国に移転していなければ、物納の撤回が可能です(相続税法第46条)。

物納と延納の比較

物納と延納はいずれも金銭一括納付が困難な場合の特例ですが、以下の点で性質が異なります。

  • 所有権の帰属:物納は財産の所有権が国に移転/延納は所有権を保持
  • 追加コスト:物納は利子税なし/延納は利子税が発生
  • 収納価額:物納は相続税評価額(路線価ベース)/延納は売却すれば時価
  • 譲渡所得税:物納による収納は所得税法第9条第1項第10号により非課税/売却すれば譲渡所得税が課税

物納を検討すべきケース

以下のような場合は、物納が有利になる可能性があります。

  • 相続財産の大半が不動産で、現金・預貯金が少ない
  • 相続した不動産が立地等の理由で売却困難
  • 相続税評価額が市場の時価より高い不動産がある(路線価が高止まりしているエリアなど)
  • 譲渡所得税の負担が大きく、売却するより物納のほうが手取りベースで有利
  • 賃料収入が乏しく、延納の利子税負担が重い不動産がある

当センターでの対応事例

東久留米市にお住まいのJさんは、ご尊父から市街化区域内の宅地3筆と現預金を相続しましたが、相続税額は約4,500万円となる一方、現預金は1,000万円ほどしかありませんでした。延納を検討しましたが、賃料収入もなく返済原資が確保できないため、当センターでは物納をご提案。境界確定や測量を半年かけて完了させ、物納適格財産の要件を整えて申請。1筆の宅地(相続税評価額約3,800万円)が物納として収納され、残額を金銭納付する形で完了しました。

西東京市・清瀬市・新座市など多摩エリアでも、不動産中心の相続では物納が有効な選択肢となります。

まとめ

物納は、相続税法第41条に基づく相続税特有の納税制度です。第1順位(不動産等)から第3順位(動産)までの順位、管理処分不適格財産の要件、相続税評価額による収納など、特有のルールがあり、申請には専門知識と入念な準備が必要です。

物納と延納のどちらが有利か、あるいは併用が最適かは、相続財産の構成・将来の資金繰り・売却可能性によって判断が変わります。早めに専門家へご相談ください。

当センターでは無料相談で物納可能性の事前診断を承っております。

当センターの実績 西東京市・東久留米市・清瀬市の不動産を含む相続案件で、境界確定・測量・物納申請までワンストップで支援。物納適格財産の要件整備に強みがあります。

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※免責事項:本記事は2026年5月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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