要 この記事の要点
- 遺贈は民法第964条に基づき、遺言によって財産を無償譲渡する行為。受遺者は相続人でも第三者でも可
- 種類:①包括遺贈(遺産の全部・割合を遺贈)、②特定遺贈(特定の財産を遺贈)。包括受遺者は民法第990条により相続人と同一の権利義務を持つ
- 遺贈の放棄:特定遺贈はいつでも可能(民法第986条)、包括遺贈は相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で放棄申述(民法第990条)
- 相続税の対象(相続税法第1条の3)。法定相続人以外への遺贈は2割加算(相続税法第18条)
遺言書を作成する際によく使われる「遺贈」という制度。これは民法第964条に基づき、遺言によって自分の財産を特定の人や団体に無償で譲渡する仕組みです。法定相続人だけでなく、お世話になった方や公益団体に財産を残したい場合に活用されます。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があり、それぞれ法律上の効果や放棄の方法、税務上の取扱いが異なります。この記事では、民法と相続税法に基づき遺贈の仕組みを詳しく解説します。
遺贈とは(民法第964条)
民法第964条は「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と定めています。これが「遺贈」の根拠条文です。
遺贈は遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)により行う必要があり、遺言の方式に従わない遺贈は無効です。受遺者(遺贈を受ける人)は、法定相続人に限らず、内縁の配偶者・友人・公益団体・法人など誰でも指定できます。
包括遺贈と特定遺贈の違い
包括遺贈とは
包括遺贈は、遺産の全部または一定の割合を指定して遺贈する方法です。例えば「遺産の3分の1を長女Aに遺贈する」「遺産全部をBに遺贈する」というように、具体的な財産を特定せず、割合的に指定します。
包括遺贈の特徴は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も同じ割合で承継する点です。
特定遺贈とは
特定遺贈は、特定の財産を指定して遺贈する方法です。「自宅の土地建物をCに遺贈する」「○○銀行の預金1000万円をDに遺贈する」というように、財産を具体的に特定します。
特定遺贈の受遺者は、指定された財産のみを取得し、借金などの債務は原則として承継しません。
包括受遺者の地位(民法第990条)
民法第990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定めています。これにより、包括受遺者は次のような相続人類似の地位に置かれます。
- 遺産分割協議への参加(民法第907条)
- 債務の承継
- 遺贈の承認・放棄の手続きが相続と同様
一方、特定受遺者にはこれらの規定は適用されず、単に指定された財産を取得する権利を持つだけです。
遺贈の放棄の方法・期限
特定遺贈の放棄
民法第986条1項により、特定受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈の放棄ができます。期限はなく、家庭裁判所の手続きも不要で、相続人または遺言執行者に対する意思表示で足ります。
ただし、遺贈義務者(相続人や遺言執行者)から「相当の期間を定めて承認するかどうかの催告」があった場合、その期間内に意思表示しないと承認したとみなされます(民法第987条)。
包括遺贈の放棄
包括受遺者は民法第990条により相続人と同様の地位に立つため、遺贈の放棄も相続放棄と同じ手続きが必要です。すなわち、自己のために遺贈があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に放棄の申述をしなければなりません(民法第915条、第938条)。
遺贈と相続の違い
遺贈と相続は似ていますが、税務上・登記上の取扱いに違いがあります。
不動産取得税
法定相続人への遺贈・相続は不動産取得税が非課税ですが、法定相続人以外への特定遺贈は不動産取得税が課税されます(地方税法第73条の7第1号)。包括遺贈は法定相続人以外への遺贈であっても非課税です。
登録免許税
不動産の所有権移転登記の登録免許税は、法定相続人への相続・遺贈は固定資産税評価額の0.4%、法定相続人以外への遺贈は2.0%です(登録免許税法別表第一)。
遺留分との関係(民法第1042条)
民法第1042条以下に定める遺留分制度は、配偶者・子・直系尊属に最低限保障される相続分のことです。遺贈によって遺留分を侵害された相続人は、受遺者に対し「遺留分侵害額請求」(民法第1046条)を行使することができます。
2019年7月1日施行の改正民法により、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」となり、金銭請求権に一本化されました。請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈・贈与があったことを知った時から1年で時効消滅し、相続開始から10年で除斥期間が完成します(民法第1048条)。
相続税の2割加算
相続税法第18条により、被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)および配偶者以外の人が相続または遺贈で財産を取得した場合、その者の相続税額に2割が加算されます。これを「相続税の2割加算」といいます。
2割加算の対象
- 兄弟姉妹
- 孫(代襲相続人ではない場合。「孫養子」も対象)
- 甥・姪
- 友人・知人など第三者
- 内縁の配偶者
2割加算の対象外
- 配偶者
- 子(実子・養子)
- 父母
- 代襲相続人としての孫
不動産の遺贈と登記
不動産の遺贈の登記は、原則として受遺者と遺言執行者(または相続人全員)が共同申請する必要がありました。しかし2023年4月1日施行の改正不動産登記法により、「相続人に対する遺贈」については受遺者が単独で登記申請できるようになりました(不動産登記法第63条3項)。
これにより相続人への遺贈の登記手続きが大幅に簡素化されています。法定相続人以外への遺贈は引き続き共同申請が必要です。
当センターの事例(西東京市)
まとめ
遺贈は、法定相続人だけでなくお世話になった方や公益団体に財産を残せる柔軟な制度です。一方で、包括遺贈と特定遺贈で法的効果が大きく異なり、遺留分や相続税の2割加算など税務面での配慮も必要です。遺言書の作成段階から専門家に相談することで、遺贈の効果を最大限活用できます。
当センターでは、遺言書作成から遺贈の実現まで一貫してサポートしています。無料相談をご利用ください。