基礎知識2026年5月19日最終更新: 2026.05.19

この記事の要点

  • 国際相続の準拠法は「法の適用に関する通則法」第36条により被相続人の本国法(国籍国の法律)。日本国籍なら日本民法、米国籍なら州法
  • 日本に居住する非居住者外国人の相続は、原則として日本の相続税制度の対象(相続税法第1条の3)。ただし無制限納税義務者・制限納税義務者で課税範囲が異なる
  • 国外財産も日本の相続税の課税対象(無制限納税義務者の場合)。国外財産調書(5,000万円超で提出義務)等で国税庁が把握
  • 国際的二重課税は外国税額控除(相続税法第20条の2)で回避。条約適用国は租税条約優先

近年、グローバル化に伴って国際相続の事案が増加しています。被相続人や相続人が外国籍であったり、海外に資産があったりする場合、日本国内の相続とは異なる複雑な手続きが必要となります。

この記事では、国際相続における準拠法の決定、日本の相続税の課税範囲、国外財産の取り扱い、二重課税の回避、在外相続人がいる場合の手続きについて、東久留米市の相続専門家が解説します。

国際相続とは

国際相続とは、被相続人または相続人が外国籍であったり、海外に財産が所在したりするなど、複数の国の法制度が関わる相続をいいます。具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 被相続人が外国籍で日本国内に資産がある
  • 被相続人は日本国籍だが海外に資産がある
  • 相続人の中に海外居住者・外国籍者がいる
  • 被相続人・相続人とも日本国籍だが、永住権や居住地が海外にある

準拠法:法の適用に関する通則法第36条

相続の準拠法は被相続人の本国法

「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)第36条は、「相続は、被相続人の本国法による」と規定しています。本国法とは、被相続人の国籍がある国の法律をいいます。これは日本における国際私法の基本ルールです。

日本国籍:日本民法適用

被相続人が日本国籍の場合、海外に居住していても、原則として相続には日本民法が適用されます。法定相続人の範囲・相続分・遺留分などはすべて日本法で判断されます。ただし、海外に所在する不動産については、所在地国の法律(「相続分割主義」を採用する国の場合)が適用されることもあります。

外国籍:本国法(米国は州法など複雑)

被相続人が外国籍の場合、その国の法律が準拠法となります。例えば米国籍の場合、連邦法ではなく州法が適用されるため、最終住所地の州法を確認する必要があります。多くの英米法系の国は「相続分割主義」(不動産は所在地法、動産は被相続人の住所地法・本国法)を採用しているため、複雑な準拠法判断が必要となります。

日本相続税の納税義務(相続税法第1条の3)

相続税法第1条の3は、相続税の納税義務者を「居住無制限納税義務者」「非居住無制限納税義務者」「居住制限納税義務者」「非居住制限納税義務者」に区分しています。

無制限納税義務者

無制限納税義務者は、国内財産・国外財産のすべてが日本の相続税の課税対象となります。日本国籍を有し、相続開始前10年以内に日本に住所を有していた場合などが該当します。

制限納税義務者

制限納税義務者は、日本国内にある財産のみが課税対象です。被相続人・相続人ともに日本国外に住所があり、相続人が日本国籍を有しない場合などが該当します。

2018年改正後の判定基準

平成29年度税制改正(2017年4月1日以後の相続)および平成30年度税制改正(2018年4月1日以後の相続)により、外国人の住所要件が見直されました。短期滞在の外国人について、国外財産が課税対象から外される措置が拡充されています。判定は複雑ですので税理士への相談をおすすめします。

国外財産の評価

無制限納税義務者の場合、国外財産も日本の相続税の課税対象となります。財産の評価は相続開始時の時価で行われます。

不動産:現地評価(鑑定評価)

海外不動産は、現地の鑑定評価書や売買事例などを参考に時価評価します。米国であればAppraisal Report、英国であればRICS鑑定書などが用いられます。日本の路線価方式は使用できません。

外国株式・ETF

海外の上場株式は、相続開始日の終値(外国の証券取引所)を基準に、為替レート(TTB)で円換算します。非上場株式の場合は、現地の評価方法または日本の財産評価基本通達に準じて評価します。

外貨建て預金

外貨預金は、相続開始日の対顧客直物電信買相場(TTB)により円換算します。為替変動が大きい場合は時期に注意が必要です。

外国税額控除(相続税法第20条の2)

国外財産について現地国でも相続税(または相続税に相当する税)が課された場合、日本の相続税から外国の相続税額を控除できる制度が「外国税額控除」です(相続税法第20条の2)。これにより国際的二重課税を回避します。

租税条約を締結している国(米国、英国など限定的)との関係では、租税条約の規定が優先されます。日本が相続税分野で租税条約を結んでいるのは現在のところ米国のみです。

在外相続人がいる場合の手続き

在留証明書

海外居住の日本人相続人については、住民票の代わりに、現地の日本大使館・領事館で発行する「在留証明書」を取得します。遺産分割協議書や不動産登記申請に添付します。

サイン証明書(印鑑証明の代わり)

海外居住の相続人は印鑑登録ができないため、印鑑証明書の代わりに「サイン証明書(署名証明書)」を在外公館で取得します。遺産分割協議書には実印の押印・印鑑証明書の添付ではなく、本人のサインとサイン証明を組み合わせて証明します。

翻訳の必要性

現地で取得した証明書(米国出生証明書、結婚証明書など)は日本語訳を添付する必要があります。翻訳者は資格を要しませんが、翻訳者の氏名・住所を記載します。

相続放棄の難しさ(3ヶ月以内、海外からの手続き)

海外居住者が相続放棄をする場合も、原則として民法第915条の3ヶ月の熟慮期間が適用されます。ただし、家庭裁判所への申述は日本の被相続人の最後の住所地を管轄する家裁に行う必要があり、書類の郵送・手続代理に時間がかかります。期間伸長の申立て(民法第915条1項但書)を活用することが多いです。

国外財産調書(所得税法第232条、国外財産5,000万円超で提出)

居住者が、その年の12月31日において国外財産の合計価額が5,000万円を超える場合、翌年の3月15日までに「国外財産調書」を所轄税務署に提出する義務があります(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第5条)。提出により国税庁が国外財産を把握しているため、相続税の申告漏れには注意が必要です。

実務上のポイント

  • 早期に国際相続に対応できる税理士・弁護士・行政書士に相談する
  • 準拠法・課税関係を確認した上で財産目録を作成する
  • 現地専門家(米国CPA、英国Solicitorなど)との連携が必要なケースも多い
  • 為替レートの変動を考慮し、評価のタイミングに注意する
  • 遺言書を作成しておくと国際相続の手続きが大幅に簡素化される

当センターでの対応事例

事例:東久留米市Rさんのケース 東久留米市にお住まいだったRさん(70代男性)は、米国カリフォルニア州にも投資不動産と銀行口座を保有されていました。Rさんの死亡後、当センターでは現地の不動産鑑定書取得・銀行口座の照会のサポートを実施。米国側のEstate Tax Returnと日本側の相続税申告書を整合させ、米国で納付した相続税相当額について外国税額控除(相続税法第20条の2)を適用。二重課税を回避しました。

まとめ

国際相続は、準拠法の決定・国外財産の評価・在外相続人の手続き・国際的二重課税の回避など、国内相続にはない複雑な論点が多くあります。早い段階から国際相続に精通した専門家に相談することが重要です。

海外資産や在外相続人がいるご相続でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。当センターでは無料相談を実施しております。

相続人調査戸籍の集め方相続税の基礎控除についても、あわせてご確認ください。当センターのサービス内容よくあるご質問もぜひご覧ください。

関連記事

手続き

相続人調査

手続き

戸籍の集め方

相続税

相続税の基礎控除

関連サービス

サービス

相続関係説明図

サービス

財産目録

※免責事項:本記事は2026年5月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

相続のことでお悩みですか?

専門スタッフが丁寧にお答えします。

お気軽にお電話ください

無料相談のお申し込み