生前対策2026年4月26日最終更新: 2026.04.26

この記事の要点

  • 成年後見制度は民法第7条以下に基づく、判断能力が不十分な方を法的に保護・支援する制度。法定後見(後見・保佐・補助)と任意後見(任意後見契約に関する法律)の2種類
  • 後見人は本人の財産を「現状維持」することが原則のため、相続対策(生前贈与・不動産売却・生命保険加入など)が事実上できなくなる
  • 任意後見は判断能力があるうちに公正証書で契約しておく制度で、法定後見より柔軟だが、家庭裁判所の任意後見監督人選任が必要
  • 認知症対策としては成年後見より家族信託(信託法第3条)の方が積極的な財産管理が可能で、相続対策との両立がしやすい

高齢化が進むなか、認知症などで判断能力が低下した家族の財産管理に悩むご家庭が増えています。こうした場合に活用される代表的な制度が「成年後見制度」です。

成年後見制度は本人の権利を守るために重要な制度ですが、利用すると相続対策が事実上できなくなるという大きな制約があります。この記事では、成年後見制度の仕組みと、相続対策との関係、近年注目される家族信託との比較について、西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市エリアの相続専門家が詳しく解説します。

成年後見制度とは(民法第7条以下)

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な方の権利を守り、生活を支援するための制度です。民法第7条以下および任意後見契約に関する法律に基づいて運用されています。

成年後見制度には大きく分けて、判断能力がすでに低下した後に家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」と、判断能力があるうちに自分で後見人を選んで契約しておく「任意後見制度」の2種類があります。

制度の目的は、財産管理(預貯金や不動産の管理・処分)と身上監護(介護サービスの契約や医療契約など)を通じて、本人の権利と生活を守ることにあります。

法定後見の3類型

法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれています。

後見(民法第7条)判断能力を欠く常況

判断能力を欠く常況にある方が対象です。重度の認知症などで日常的な買い物も自分でできない状態の方が該当します。成年後見人には、財産に関するすべての法律行為について包括的な代理権が付与されます。

保佐(民法第11条)判断能力が著しく不十分

判断能力が著しく不十分な方が対象です。日常の買い物程度はできるものの、不動産売買や預貯金の管理など重要な財産行為が困難な状態の方が該当します。保佐人には、民法第13条に定める重要な法律行為について同意権・取消権が付与されます。

補助(民法第15条)判断能力が不十分

判断能力が不十分な方が対象です。重要な財産行為であっても、ある程度自分で判断できるものの、援助があった方が良いという程度の方が該当します。補助人には、申立ての範囲内で同意権・取消権・代理権が付与されます。

任意後見制度(任意後見契約に関する法律)

任意後見制度は、判断能力があるうちに、自分で選んだ任意後見人に将来の財産管理や身上監護を任せておくことができる制度です。本人の意思を尊重した制度設計が可能です。

任意後見契約は、必ず公正証書で締結する必要があります(任意後見契約に関する法律第3条)。法務局への登記もされ、契約内容が公的に証明されます。

契約締結後、本人の判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てます。任意後見監督人が選任されたときから、任意後見契約の効力が発生します。

任意後見は本人の意思を反映できる柔軟性がある一方、本人の判断能力が低下する前にあらかじめ準備しておく必要があるため、計画的な活用が求められます。

成年後見制度の問題点

成年後見制度は本人保護のための重要な制度ですが、利用にあたっては慎重に検討すべき問題点もあります。

相続対策ができなくなる

成年後見人の役割は、本人の財産を「現状維持」することが基本です。本人の利益のためであっても、原則として生前贈与はできません。また、自宅不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要となり、生命保険への新規加入や保険内容の変更なども制限されます。

このため、成年後見が開始すると、節税のための生前贈与、収益不動産の組み換え、生命保険を活用した相続対策などが事実上できなくなります。相続対策は、判断能力があるうちに行っておくことが何よりも大切です。

後見人報酬が発生し続ける

成年後見人に専門職(弁護士・司法書士など)が選任された場合、家庭裁判所が決定する後見人報酬を本人の財産から継続的に支払うことになります。報酬は本人の財産規模により異なりますが、月額2〜6万円程度が一般的な相場です。

後見は本人が亡くなるまで継続するため、長期化すると相応の負担となります。任意後見人の報酬は契約で決定しますが、任意後見監督人の報酬も別途発生します。

家庭裁判所の監督下に置かれる

成年後見が開始すると、本人の財産は家庭裁判所の監督下に置かれることになります。後見人は定期的に財産目録や収支状況を裁判所へ報告する義務を負います。財産の処分や大きな支出には裁判所の許可が必要となるため、家族の意向だけで柔軟に対応することができません。

成年後見と家族信託の比較

近年、認知症対策として「家族信託(民事信託)」が注目されています。信託法第3条に基づき、信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を託す仕組みで、成年後見よりも柔軟な財産管理が可能です。

両者の違いを表にまとめると以下のとおりです。

項目 成年後見制度 家族信託
積極的運用 原則不可(現状維持) 可能(信託契約による)
不動産売却 家裁の許可が必要 受託者が判断可能
相続対策 原則できない 設計に組み込み可能
コスト 後見人報酬が継続 初期費用中心
開始時期 判断能力低下後でも可能 判断能力があるうちのみ
専門家関与 後見人として関与 設計サポートが中心

成年後見制度の利用が必要なケース

家族信託にも限界があり、次のようなケースでは成年後見制度の利用が必要となります。

  • すでに判断能力が低下している場合:家族信託は本人に契約能力が必要なため、すでに認知症が進行している場合には設定できません。この場合は成年後見制度を利用することになります。
  • 家族間に紛争性がある場合:家族間で意見が対立しており、信頼関係が築けない場合は、第三者である成年後見人による中立的な財産管理が望まれます。
  • 身上監護が必要な場合:家族信託は財産管理に特化した制度のため、介護施設の入所契約や医療契約などの身上監護が必要なケースでは、成年後見との併用が望ましい場合があります。
  • 身寄りのない方の場合:信頼して財産を託せる家族がいない場合は、専門職による成年後見を利用することになります。

相続発生時の成年後見人の役割

本人が相続人となる相続が発生した場合、成年後見人は本人を代理して遺産分割協議に参加します。後見人は本人の利益を守る立場から、原則として法定相続分以上の取得を主張する必要があります。

本人と後見人の双方が同じ相続の相続人である場合(例:母の後見人を長男が務めており、父の相続が発生した場合)は、利益相反となるため、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります(民法第860条準用)。

このため、特定の相続人に多めに財産を集中させたい場合や、被相続人の遺志を反映させた柔軟な遺産分割を行いたい場合には、後見開始後では実現が困難になります。元気なうちに遺言書を作成しておくことが、相続対策としても有効です。

当センターでの対応事例

新座市にお住まいのDさん(50代女性)からのご相談事例です。Dさんのお母様が認知症を発症され、判断能力の低下が見られたため、成年後見制度の利用を検討されていました。

当センターでは、お母様の財産状況を整理した上で、法定後見の申立てを司法書士と連携してサポートしました。同時に、Dさんご自身の相続対策(遺言書作成・財産目録の整備)にも取り組み、ご家族全体の長期的な相続準備を支援しました。

東久留米市や清瀬市、西東京市エリアでも、ご家族の判断能力が低下する前に、家族信託や任意後見の活用、遺言書作成を進めておくことで、将来の選択肢を広く確保できます。

まとめ

成年後見制度は、判断能力が低下した方を法的に保護する重要な制度ですが、利用すると相続対策が事実上できなくなるという制約があります。認知症対策と相続対策を両立させるためには、判断能力があるうちに、家族信託や任意後見、遺言書作成などの準備を進めておくことが大切です。

どの制度がご家族に最適かは、財産構成や家族関係によって異なります。当センターでは無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

家族信託の活用エンディングノートの書き方生前贈与の活用についても、あわせてご確認ください。当センターのサービス内容よくあるご質問もぜひご覧ください。

当センターの実績 当センターでは、新座市Dさんのケースで、お母様の認知症発症後の法定後見申立てを司法書士と連携してサポートしつつ、Dさんご自身の相続対策(遺言書作成・財産目録整備)も並行して進め、ご家族全体の長期的な相続準備を支援した実績があります。

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※免責事項:本記事は2026年4月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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