要 この記事の要点
- 共有物の分割は民法第258条に基づき、協議または裁判による分割が可能。2023年4月1日施行の改正で「所在等不明共有者」の持分取得・譲渡制度(民法第262条の2・第262条の3)が新設
- 共有物の利用ルール:①保存行為は各共有者が単独可、②管理行為(軽微な変更含む、改正で明文化)は持分価格の過半数で決定(民法第252条)、③変更行為・処分は全員の同意必要(民法第251条)
- 分割方法:①現物分割、②賠償分割(代償分割)、③換価分割(競売による分割)。改正で賠償分割が裁判所の選択肢として明確化(民法第258条2項)
- 共有相続には相続登記の義務化(2024年4月1日施行、不動産登記法第76条の2)が適用される。共有持分にも登記義務あり、正当理由なく怠ると10万円以下の過料
遺産分割で不動産を相続人複数の共有名義にするケースは少なくありません。当面の合意を得るためには共有が便利ですが、共有のまま長期化すると売却・利用が困難になり、将来世代に重い負担を残します。さらに2024年4月から相続登記が義務化され、共有持分にも登記義務が課せられました。
この記事では、共有不動産の相続について、2023年4月1日施行の改正民法による新ルール、共有物の利用・分割方法、相続登記義務化との関係まで、法的根拠を示しながら詳しく解説します。
共有不動産が発生する主な原因
相続で共有不動産が発生する主なケースは次のとおりです。
- 遺産分割協議で共有を選択した:相続人間で合意がまとまらず、とりあえず法定相続分で共有にした
- 遺言で共有を指定された:被相続人が遺言で複数の相続人に持分を指定した
- 代襲相続が複数発生:相続人の人数が増えて結果的に細分化された共有になった
- 未分割のまま長期化:法定相続分による登記がなされたまま放置された
共有のリスク
共有不動産は次のような複数のリスクを抱えています。
1. 売却が困難
共有物の売却(処分)は共有者全員の同意が必要です(民法第251条1項)。一人でも反対すれば売却できず、市場価格より大幅に安い「持分のみの売却」をせざるを得ないケースがあります。
2. 固定資産税の分担トラブル
共有不動産の固定資産税は、市町村から代表者に一括請求されます(地方税法第10条の2第1項により、共有者は連帯納付義務)。立替えた代表者が他の共有者から精算を受けられず、共有者間の関係が悪化することがあります。
3. 利用方法の対立
共有者の一人が無償で住み続けたい、賃貸に出したい、自分が買い取りたいなど、利用方針が対立しやすい構造です。多数決で決められる「管理行為」とそうでない「変更行為」の境界が問題になります。
4. 将来世代の煩雑化
共有のまま次の相続が発生すると、持分がさらに細分化されます。例えば子3人で1/3ずつ共有していて、それぞれにさらに3人の相続人がいた場合、孫世代では9人で1/9ずつの共有になり、合意形成は事実上不可能になります。
2023年改正のポイント
令和3年法律第24号により、2023年4月1日から共有関連の規定が大きく改正されました。所有者不明土地問題への対応が主な目的です。主な改正点は次のとおりです。
- 共有物の管理行為に「軽微な変更」を含めることが明文化(民法第251条1項括弧書・第252条1項括弧書)
- 所在等不明共有者の持分取得制度(民法第262条の2)を新設
- 所在等不明共有者の持分譲渡制度(民法第262条の3)を新設
- 賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理ルール(民法第252条2項2号)
- 共有物分割の方法(賠償分割)が裁判所の選択肢として明確化(民法第258条2項)
共有物の利用ルール(保存・管理・変更)
共有物の利用は、行為の性質によって決定方法が異なります。
保存行為(各共有者単独で可)
共有物の現状を維持する行為(修繕、不法占拠者への明渡請求、保存登記など)は、各共有者が単独で行うことができます(民法第252条5項)。
管理行為(持分価格の過半数で決定)
共有物の利用・改良に関する行為(短期賃貸借、軽微な変更、管理者の選任など)は、持分価格の過半数で決定します(民法第252条1項)。改正により、形状または効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」も管理行為に含まれることが明文化されました。
変更行為(全員の同意必要)
共有物の形状または効用の著しい変更を伴う行為(建物の大規模改修、長期賃貸借、売却・処分など)は、共有者全員の同意が必要です(民法第251条1項)。
所在等不明共有者・賛否不明共有者がいる場合
2023年改正で、所在等不明共有者や賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理決定のルールも整備されました。裁判所の決定を経て、これらの共有者を除いた他の共有者の持分価格の過半数等で管理行為を決定することが可能になりました(民法第252条2項各号)。
所在等不明共有者対応(民法第262条の2・第262条の3)
2023年改正で新設された画期的な制度です。共有者の中に所在不明者がいて協議ができない場合の解決策が用意されました。
持分取得制度(民法第262条の2)
必要な調査をしても所在が判明しない共有者がいる場合、他の共有者は、裁判所の決定を得てその不明共有者の持分を取得することができます。取得する共有者は、不明共有者の持分時価相当額を供託する必要があります。
持分譲渡制度(民法第262条の3)
所在等不明共有者がいる場合に、他の共有者全員が特定の第三者へ持分全部を譲渡することを希望する場合、裁判所の決定を得て、不明共有者の持分を含む共有物全体を第三者に売却することができる制度です。
これらの制度により、所在等不明共有者による共有関係解消の困難さが大幅に緩和されました。
共有物分割の3つの方法
民法第258条は、共有物分割訴訟における分割方法を定めています。2023年改正で第2項が改正され、分割方法の優先順位がより明確になりました。
1. 現物分割
共有物を物理的に分割する方法です。広い土地を持分割合に応じて区分する場合などに用いられます。建物では物理的分割が困難なため、適用は限定されます。
2. 賠償分割(代償分割)
共有者の一人が単独所有とし、他の共有者に対して持分の対価(代償金)を支払う方法です。2023年改正により、民法第258条2項2号で裁判所の選択肢として明確化されました。事業継続や居住継続を希望する共有者がいる場合に有用です。
3. 換価分割(競売による分割)
共有物を競売により売却し、代金を持分割合に応じて分配する方法です。現物分割も賠償分割も困難な場合の最終手段です(民法第258条3項)。市場価格より低い価格で落札されるリスクがあります。
協議分割と裁判分割
協議分割
共有者全員の合意により分割する方法です。話し合いがまとまれば、自由な内容で分割できます(民法第256条・第258条1項の反対解釈)。費用も時間も最小限で済む点がメリットです。
裁判分割
協議が調わない場合、各共有者は地方裁判所に共有物分割訴訟を提起できます(民法第258条1項)。裁判所は事案に応じて現物分割・賠償分割・換価分割のいずれかを選択し、判決によって分割します。手続には1年以上かかることが多く、弁護士費用等のコストも大きくなります。
相続登記義務化との関係(2024年4月1日施行)
不動産登記法第76条の2(2024年4月1日施行)により、相続による所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました。
共有持分にも登記義務
共有持分の取得についても登記義務が課されます。法定相続分による登記、遺産分割協議による登記のいずれも対象です。正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
相続人申告登記制度
遺産分割が長期化して所有権の登記が困難な場合は、簡易な「相続人申告登記」(不動産登記法第76条の3)を3年以内に申し出ることで、義務違反を回避できます。ただし、相続人申告登記は所有権の登記ではないため、その後遺産分割が確定したら本来の相続登記が必要です。
2024年4月1日より前の相続にも適用
義務化施行(2024年4月1日)より前に発生した相続にも遡及適用されます。この場合は施行日から3年以内(2027年3月31日まで)が登記の期限です。共有のまま放置している昔の相続不動産も対象になります。
共有解消の選択肢
共有不動産を抱えている場合、次のような解消策があります。
- 遺産分割協議のやり直し:相続人全員の同意があれば再分割協議が可能
- 持分の買取り:他の共有者の持分を買い取って単独所有化
- 持分の売却:自分の持分のみを他の共有者または第三者に売却
- 共有物分割協議:共有者間で分割方法を話し合う
- 共有物分割訴訟:協議不調の場合の最終手段
- 所在等不明共有者持分取得申立て(民法第262条の2):所在不明者がいる場合の新制度活用
当センターの実績
まとめ
共有不動産は、当面の遺産分割では便利ですが、長期的には大きなリスクを抱える形態です。2023年4月の民法改正と2024年4月の相続登記義務化により、共有問題への法的アプローチは大きく整理されましたが、最善の解決はやはり「相続時に共有を選ばない」ことです。
すでに共有になっている不動産については、所在等不明共有者の制度(民法第262条の2・第262条の3)や賠償分割(民法第258条2項)など新しい選択肢を活用しつつ、計画的な解消を進めましょう。
当センターでは、遺産分割協議の段階での共有回避提案から、共有不動産の解消、相続登記義務化への対応まで、不動産・登記の専門家と連携してワンストップでサポートいたします。無料相談をぜひご利用ください。不動産の名義変更や当センターのサービス内容もあわせてご確認ください。