要 この記事の要点
- 借地権は財産権であり民法第896条により相続財産として相続される。地主の承諾は不要(譲渡と異なる)
- 借地権の種類:①普通借地権(借地借家法第3条)、②定期借地権(借地借家法第22条)、③事業用定期借地権(借地借家法第23条)、④建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条)
- 相続税評価額は「自用地評価額×借地権割合」(国税庁の路線価図に記載、地域により30〜90%)
- 名義変更料(譲渡承諾料)は相続では不要(地主が要求しても法的根拠なし)。ただし、相続後に建替えや増改築する場合は地主の承諾と承諾料が必要なケースあり
被相続人が他人の土地を借りて自宅や店舗を建てていた場合、その「借地権」も相続財産として相続人に引き継がれます。借地権は財産的価値が高く、相続税評価でも重要な位置を占めます。一方で「地主の承諾が必要なのか」「相続時に名義変更料を支払う必要があるのか」といった疑問もよく寄せられます。
この記事では、借地借家法に基づく借地権の種類、相続性、相続税評価、契約更新、建替え時の地主との関係について、西東京市・東久留米市エリアの実例を交えて解説します。
借地権とは
借地権とは、建物の所有を目的として他人の土地を使用する権利のことです。借地借家法第2条1号において「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義されています。地代を支払う代わりに、土地上に建物を建てて利用できる権利です。
借地権は単なる土地利用の権利にとどまらず、譲渡や担保設定が可能な財産権としての性格を持ちます。都市部では借地権そのものの取引価格が、更地価格の60〜80%に達することも珍しくありません。
借地権の4つの種類(借地借家法)
1992年8月1日に施行された借地借家法では、借地権を以下の4種類に整理しています。
1. 普通借地権(借地借家法第3条)
存続期間は30年以上で、契約で定めなければ30年となります。期間満了後は、借地権者からの更新請求または土地の使用継続によって更新され、最初の更新後は20年、その後の更新は10年が法定の期間です(借地借家法第4条)。地主の更新拒絶には「正当の事由」が必要(借地借家法第6条)で、実務上は更新が原則となっています。
2. 定期借地権(借地借家法第22条)
存続期間50年以上で設定する借地権で、契約更新がなく期間満了時に建物を取り壊して土地を返還する仕組みです。公正証書等の書面(電磁的記録を含む)による契約が必要です。
3. 事業用定期借地権(借地借家法第23条)
専ら事業の用に供する建物(居住用を除く)の所有を目的とする借地権で、存続期間は10年以上50年未満です。公正証書による契約が必須とされています。
4. 建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条)
存続期間30年以上で、期間満了時に地主が建物を買い取る特約を付した借地権です。
借地権の相続|地主の承諾は不要
借地権は財産権であるため、民法第896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」の規定により、相続人に当然に承継されます。
ここで重要なのは、借地権の相続には地主の承諾が不要であるという点です。借地権の譲渡や転貸については民法第612条1項により賃貸人(地主)の承諾が必要ですが、相続は「譲渡」ではなく「包括承継」であるため、この規定は適用されません。
そのため、相続を理由に地主から「名義変更料」「承諾料」を要求された場合でも、法的に支払う義務はありません。ただし、円満な関係維持のため、相続が発生した旨を地主に通知することは実務上推奨されます。
借地権の相続税評価
借地権は財産評価基本通達27により、次の算式で評価されます。
借地権の評価額 = 自用地としての評価額 × 借地権割合
借地権割合の確認方法
借地権割合は国税庁が公表する路線価図・評価倍率表に記載されており、地域により30%〜90%の範囲で設定されています。アルファベットA〜Gで表示され、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%です。
例えば西東京市の住宅地ではC(70%)またはD(60%)が多く、駅前商業地ではA(90%)やB(80%)も見られます。最新の路線価は国税庁ウェブサイトで毎年7月上旬に公表されます。
定期借地権の評価
定期借地権は財産評価基本通達27-2により、残存期間や経済的利益を考慮した別の算式で評価されます。普通借地権よりも一般に評価額は低くなります。
地代の支払いと相続
借地権を相続した相続人は、地主との間の賃貸借契約上の地代支払義務も承継します。地代の額や支払時期は従前の契約に従いますが、相続を機に地主と協議して見直すこともあります。
なお、相続人が複数いる場合に借地権を共有相続したときは、地代の支払いも相続人全員で連帯して負担することになるため、遺産分割協議で借地権を取得する相続人を確定させることが望ましいでしょう。
契約期間と更新
普通借地権の契約期間中に相続が発生した場合、相続人は残存期間を引き継ぎます。期間満了時には借地借家法第5条の更新請求または同条2項の使用継続による法定更新が可能で、地主が更新を拒絶するには借地借家法第6条の「正当の事由」が必要です。
正当事由の判断には、①地主・借地人双方の土地使用の必要性、②借地に関する従前の経過、③土地利用状況、④立退料の提供などが総合的に考慮されます。
建替え・増改築時の地主承諾
相続自体には地主の承諾は不要ですが、相続後に建物を建て替えたり大規模な増改築をしたりする場合は、契約上「増改築禁止特約」が定められていることが多く、地主の承諾と承諾料の支払いが必要になるケースが一般的です。
地主が承諾しない場合、借地非訟手続(借地借家法第17条)として裁判所に「増改築許可の裁判」を申し立てることができます。裁判所は相当の承諾料を定めた上で許可を与えることが可能です。
借地権の譲渡と地主の承諾
相続した借地権を第三者に売却する場合は、民法第612条1項により地主の承諾が必要となり、譲渡承諾料(実務上、借地権価格の10%前後が目安)を支払うのが慣例です。
地主が承諾しない場合は、借地借家法第19条に基づき裁判所に「借地権譲渡許可の裁判」を申し立てる方法があります。
当センターの事例(東久留米市)
まとめ
借地権は重要な財産権であり、相続時には民法第896条により当然に相続人へ承継されます。地主の承諾や名義変更料は法的に不要ですが、相続後の建替えや譲渡では地主との関係が重要になります。借地権割合に基づく相続税評価額の計算も慎重に行う必要があり、専門家への相談をおすすめします。
当センターでは、西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市エリアで多数の借地権相続の実績があります。無料相談をご利用ください。