要 この記事の要点
- 養子は民法第809条により縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、実子と同じ法定相続分を持つ
- 普通養子(民法第792条以下)は実親との親子関係も継続するため両方から相続可能。特別養子(民法第817条の2)は実親との関係が消滅
- 相続税法第15条2項により、基礎控除や生命保険金非課税枠の計算では養子の数に制限:実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人までしか算入できない
- 節税目的のみの養子縁組は相続税法第63条により否認されるリスク。家族関係の構築・事業承継など合理的理由が必要
養子縁組は、家族関係の構築だけでなく、事業承継や相続税の節税対策としても活用される制度です。しかし、「養子の相続権はどうなるのか」「節税効果はどの程度か」「税務署に否認されるケースはあるのか」など、押さえておくべきポイントが数多くあります。
本記事では、民法上の養子縁組の基本から、相続税法上の養子の数の制限、節税効果と否認リスクまで、西東京市の専門家がわかりやすく解説します。
養子縁組とは(民法第792条以下)
養子縁組は、血縁関係にない者の間で法律上の親子関係を成立させる制度で、民法第792条以下に規定されています。日本の養子縁組制度には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
普通養子と特別養子の違い
普通養子(民法第792条〜第817条)
普通養子縁組は、養親と養子の合意(届出)により成立する養子縁組です。主な要件は次のとおりです。
- 養親が成年者であること(民法第792条)
- 養子が養親の尊属または年長者でないこと(民法第793条)
- 養子となる者が15歳未満の場合は法定代理人の代諾が必要(民法第797条)
- 配偶者のある者が未成年者を養子とする場合は配偶者と共同で(民法第795条)
- 養子縁組の届出(民法第799条)
普通養子の最大の特徴は、養子と実親との親子関係が継続する点です。したがって、普通養子は養親と実親の双方から相続することができます。
特別養子(民法第817条の2〜第817条の11)
特別養子縁組は、子の福祉を図るために実親との親子関係を断ち切り、養親との間にのみ親子関係を成立させる制度です。普通養子よりも要件が厳格で、家庭裁判所の審判によって成立します(民法第817条の2)。
主な要件は次のとおりです。
- 養親は原則として25歳以上の夫婦で共同して養親になる(民法第817条の3、第817条の4)
- 養子となる者は原則として15歳未満(令和2年4月施行の改正で6歳未満から15歳未満に拡大/民法第817条の5)
- 実父母の同意が原則必要(民法第817条の6)
- 子の利益のため特に必要があると認められること(民法第817条の7)
- 6ヶ月以上の試験養育期間(民法第817条の8)
特別養子縁組が成立すると、実親との親族関係は終了します(民法第817条の9)。したがって、特別養子は実親からは相続せず、養親からのみ相続することになります。
養子の相続権(民法第809条)
民法第809条は「養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する」と定めています。これにより、養子は養親の実子と同じ法定相続分を持ちます。
例えば、養親に実子1人と養子1人がいて配偶者がいない場合、相続分は実子1/2、養子1/2となります。「養子だから相続分が少ない」という扱いはありません。
相続税の養子の数の制限(相続税法第15条2項)
民法上は何人でも養子にできますが、相続税法第15条第2項では、基礎控除や生命保険金等の非課税限度額を計算する際に算入できる養子の数を以下のとおり制限しています。
実子がいる場合:1人まで
被相続人に実子がいる場合、相続税の計算上、養子は1人までしか法定相続人の数に含めることができません。
実子がいない場合:2人まで
被相続人に実子がいない場合は、養子を2人まで法定相続人の数に含めることができます。
制限の例外(特別養子・配偶者の連れ子養子など)
相続税法第15条第3項により、次の養子は「実子とみなして」全員を法定相続人の数に算入できます。
- 特別養子縁組による養子
- 配偶者の実子(連れ子)を養子にした場合
- 被相続人と配偶者の婚姻前にその配偶者の特別養子になっていた者で、被相続人との婚姻後に被相続人の養子になった者
- 実子・養子の代襲相続人
孫を養子にする節税効果
基礎控除・非課税枠の増加
養子を1人増やすと、相続税の計算上、次のような節税効果が見込めます(実子がいる場合は1人、いない場合は2人までが上限)。
- 基礎控除の増加:1人につき600万円(相続税法第15条第1項。基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数)
- 生命保険金の非課税枠:1人につき500万円(相続税法第12条第1項第5号)
- 死亡退職金の非課税枠:1人につき500万円(相続税法第12条第1項第6号)
- 相続税率の軽減:法定相続人が増えることで各人の取得分が減り、累進税率による負担が下がる
相続税の2割加算(相続税法第18条)
注意が必要なのは、孫を養子にした場合の「相続税額の2割加算」です。相続税法第18条は、被相続人の一親等の血族(子・父母)および配偶者以外の者が相続・遺贈により財産を取得した場合に、税額の20%を加算すると定めています。
孫養子は、代襲相続人となる場合を除き、この2割加算の対象になります(同条第2項)。節税目的で孫養子にする場合は、2割加算分を差し引いてもメリットがあるかを慎重に検討する必要があります。
世代飛ばし効果
とはいえ、孫養子には「世代飛ばし」のメリットがあります。通常、財産は親→子→孫と相続され、各段階で相続税が課税されますが、孫を養子にすれば子の世代を飛ばして直接孫に承継でき、トータルの相続税負担を減らせる可能性があります。
養子縁組の節税が否認されるケース(相続税法第63条)
相続税法第63条は、「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、その養子の数を当該被相続人の相続人の数に算入しないで相続税の課税価格及び相続税額を計算することができる」と定めています。
これは、節税のみを目的とした実態のない養子縁組を税務署が否認できる根拠規定です。最高裁平成29年1月31日判決では、「節税目的があったとしても、養子縁組の意思(縁組をする意思)があれば直ちに無効とはいえない」と判示されましたが、これは民法上の有効性に関する判断であり、相続税法第63条による課税上の否認は別問題です。
否認リスクを下げるためには、家族関係の構築・事業承継・介護への協力など、養子縁組の合理的な理由・実態を備えておくことが重要です。
養子縁組の手続き
普通養子縁組は、市区町村役場への養子縁組届の提出により成立します。届出には養親・養子双方の署名(および証人2名)が必要です。15歳未満の子を養子にする場合は法定代理人の代諾が必要です。
特別養子縁組は、家庭裁判所への申立てが必要です。試験養育期間(6ヶ月以上)を経て、家庭裁判所の審判により成立します。
養子縁組の解消(離縁)と相続
普通養子縁組は、養親・養子の協議により解消(離縁)できます(民法第811条)。協議が整わない場合は調停・裁判による離縁の道もあります(民法第814条)。
離縁により、養親・養子間の親子関係は終了し、相続権も失われます。ただし、離縁前に発生した相続については影響しません。特別養子は原則として離縁できず、例外的に家庭裁判所の審判による離縁のみが認められます(民法第817条の10)。
当センターでの対応事例
清瀬市にお住まいのKさんは、お孫様を養子にすることでの相続税対策をご検討中でした。当センターでは、相続税法第15条第2項の養子の数の制限、第18条の2割加算、第63条の否認リスクを総合的にシミュレーション。実子1名がいるご家庭で養子を1名増やすことで、基礎控除が600万円、生命保険金非課税枠が500万円増え、税率階層も1段下がる試算となりました。2割加算分を差し引いても約280万円の節税効果が見込めるため、合理的な縁組理由(介護への協力)も整えたうえで養子縁組を実行されました。
西東京市・東久留米市・新座市の事業承継案件でも、養子縁組のご相談が増えています。
まとめ
養子縁組は、民法第809条により実子と同じ相続権を取得する強力な制度ですが、相続税の計算上は第15条第2項により養子の数に制限があり、第63条により節税目的のみの縁組は否認されるリスクがあります。
孫養子の場合は2割加算(相続税法第18条)にも注意が必要です。相続税の基礎控除や生命保険と相続とあわせて検討することで、最適な相続対策が見えてきます。
当センターでは無料相談で養子縁組のメリット・デメリットの試算を承っております。