遺言書2026年6月6日最終更新: 2026.06.06

この記事の要点

  • 遺言執行者は民法第1012条により遺言の内容を実現する権限・義務を持ち、2019年(令和元年)7月1日施行の改正で独立した地位が明確化された
  • 選任方法は3つ:①遺言による指定(民法第1006条)、②指定の委託、③家庭裁判所による選任(民法第1010条)
  • 遺言執行者にしかできない専属事項:遺贈の履行(民法第1012条2項)、相続人の廃除(民法第893条)、認知(戸籍法第64条/民法第781条2項)
  • 報酬は遺言で定めるか家庭裁判所が決定(民法第1018条)。法人も遺言執行者になれる

遺言書を作成しても、その内容を実際に実現する人がいなければ意味がありません。預貯金の解約、不動産の名義変更、相続人への分配など、遺言の内容を実現するために動く人を「遺言執行者」といいます。

2019年7月1日施行の改正民法では、遺言執行者の権限や地位が大きく明確化されました。この記事では、遺言執行者の役割・選任方法・報酬まで詳しく解説します。

遺言執行者とは(民法第1012条)

民法第1012条1項は「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定めています。つまり、遺言執行者は遺言の内容を実現する「実行役」です。

2019年改正による明確化

改正前の民法では、遺言執行者は「相続人の代理人」とみなされる規定があり、相続人と利益が対立する場面で混乱が生じていました。2019年7月1日施行の改正により、遺言執行者は遺言者の意思を実現する独立の地位を持つことが明確化されました(改正民法第1015条は、遺言執行者がその権限内でした行為の効果が相続人に帰属することを規定)。

遺言執行者の3つの選任方法

方法1:遺言による指定(民法第1006条)

遺言者が遺言の中で「遺言執行者として○○を指定する」と記載する方法です。最も一般的で、遺言者の意思が反映されやすい方法です。司法書士、行政書士、税理士、弁護士などの専門家を指定するケースが増えています。

方法2:指定の委託(民法第1006条1項)

遺言者が「遺言執行者の指定を○○に委託する」と遺言で定める方法です。委託を受けた人は、遺言者の死亡後に遺言執行者を選任します。

方法3:家庭裁判所による選任(民法第1010条)

遺言で執行者が指定されていない場合、または指定された執行者が辞退・死亡などで欠けた場合に、利害関係人の請求により家庭裁判所が選任します。

遺言執行者の専属事項

以下の行為は、遺言執行者がいる場合は遺言執行者にしかできません。

遺贈の履行(民法第1012条2項)

2019年改正で新設された規定で、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができます。受遺者は遺言執行者に対して遺贈の履行を求めます。

相続人の廃除・廃除の取消し(民法第893条・第894条2項)

遺言で相続人を廃除する旨を定めた場合、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をします。

認知(民法第781条2項)

遺言で認知をする旨を定めた場合、遺言執行者は就任後10日以内に戸籍法第64条に基づき認知の届出を行います。

遺言執行者になれない人(民法第1009条)

民法第1009条は「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない」と定めています。それ以外の制限はなく、相続人や受遺者も遺言執行者になれます。法人を指定することも可能で、信託銀行や専門家法人が選ばれることもあります。

遺言執行者の義務

就職の承諾と相続人への通知(民法第1007条)

遺言執行者に指定された人は、就職を承諾するか否かを決められます。承諾した場合、直ちに任務を開始し、遺言の内容を相続人に通知する義務があります(2019年改正で明文化)。

財産目録の作成・交付(民法第1011条)

遺言執行者は遅滞なく相続財産の目録を作成し、相続人に交付しなければなりません。

善管注意義務(民法第1012条3項・第644条準用)

遺言執行者は、善良な管理者の注意をもって任務を遂行する義務を負います。

報告義務

民法第1012条3項により第645条が準用され、相続人の請求に応じて執行の状況を報告する義務があります。

遺言執行者の報酬(民法第1018条)

民法第1018条1項は「家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる」と定めています。遺言で報酬が定められていればその金額、定められていなければ家庭裁判所が決定します。

報酬の相場

専門家に依頼する場合の報酬は、相続財産の規模により異なりますが、概算で次のような目安です(あくまで一般的な参考値で、事務所により異なります)。

  • 相続財産5,000万円以下:30万円〜(概算)
  • 相続財産5,000万円〜1億円:30万円〜100万円程度(概算)
  • 1億円超:個別見積(概算)

辞任・解任(民法第1019条)

遺言執行者は、正当な事由があるときに限り、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(民法第1019条2項)。また、任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人の請求により家庭裁判所が解任できます(同条1項)。

妨害行為の禁止(民法第1013条)

民法第1013条1項により、遺言執行者がある場合、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません。2019年改正で2項以下が新設され、相続人がこれに違反してした処分行為は無効とされる一方で、善意の第三者は保護されます。

具体的な業務内容

金融機関の手続き

預貯金の解約・名義変更、有価証券の換金などを単独で行えます。各金融機関への通知、相続関係書類の提出、解約・送金まで一貫して対応します。

不動産の手続き

不動産の相続登記、遺贈登記の申請を行います。2019年改正により、受遺者への遺贈登記は遺言執行者が単独で申請できるようになりました。

遺産の分配

遺言の指定に従って、相続人・受遺者に遺産を分配します。すべての手続きが完了したら、相続人に最終報告を行います。

当センターの対応事例

清瀬市にお住まいの方から、孫への遺贈を含む遺言の遺言執行者就任のご依頼を受けたケースがあります。預貯金口座5行、不動産2件、相続人と受遺者が合計6名という比較的複雑な事案でしたが、当センターが遺言執行者として遺言の内容を相続人全員に通知し、財産目録を作成。各金融機関での手続き、不動産の遺贈登記まで一貫して対応し、約4ヶ月で完了しました。

まとめ

遺言執行者は、遺言を確実に実現するための重要な存在です。とくに2019年改正で権限が明確化され、遺言執行者を指定しておくことのメリットが大きくなりました。相続人だけで手続きを行うと意見対立で進まなくなることもあるため、専門家を遺言執行者に指定することを強くおすすめします。

当センターでは、遺言執行者の就任、就任後の手続き代行まで対応しております。無料相談をぜひご利用ください。

遺言書の作成方法もあわせてご覧ください。

当センターの実績 清瀬市の事例では、当センターが遺言執行者に就任し、相続人・受遺者6名/金融機関5行/不動産2件の手続きを約4ヶ月で完了。2019年改正で単独申請が可能となった遺贈登記もスムーズに進めました。

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※免責事項:本記事は2026年6月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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