遺言書2026年6月4日最終更新: 2026.06.04

この記事の要点

  • 民法第1022条により、遺言者はいつでも遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できる
  • 撤回の方法は4種類:①新しい遺言、②抵触する遺言・生前処分(民法第1023条)、③遺言書の故意破棄(民法第1024条前段)、④遺贈目的物の故意破棄(民法第1024条後段)
  • 撤回時の方式は自由:公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能
  • 撤回権の放棄は不可(民法第1026条)、一度撤回した遺言は原則復活しない(民法第1025条

遺言書は一度作成したら変更できないというイメージを持つ方も多いですが、実際には民法上、遺言者はいつでも自由に撤回・変更できることになっています。家族関係や財産状況、相続人との関係性が変わったときに、遺言の内容を見直すことは決して珍しいことではありません。

この記事では、遺言書の撤回・変更について、民法の規定に沿って詳しく解説します。

遺言撤回の自由(民法第1022条)

民法第1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定めています。これを「遺言撤回の自由」といいます。

遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であるため、生前に気持ちが変われば何度でも書き直せるのが原則です。撤回の理由を説明する必要もありません。

遺言を撤回する4つの方法

方法1:新しい遺言書を作成する(民法第1022条)

最も一般的な方法は、新しい遺言書を作成し、その中で「先に作成した遺言を撤回する」と明記することです。新旧の遺言が同一の方式である必要はなく、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回することも、その逆も可能です。

方法2:抵触する遺言・生前処分による撤回擬制(民法第1023条)

民法第1023条1項は「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と定めています。さらに同条2項により、遺言と抵触する生前処分(贈与など)も撤回擬制の対象となります。

たとえば「自宅をAに遺贈する」という遺言を作成した後に、その自宅をBに生前贈与した場合、Aへの遺贈部分は撤回されたものとみなされます。

方法3:遺言書の故意破棄(民法第1024条前段)

民法第1024条前段は「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす」と定めています。自筆証書遺言を本人が破ったり、燃やしたりした場合、その部分は撤回擬制されます。

ただし、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているため、手元の正本・謄本を破棄しても撤回にはなりません。公正証書遺言を撤回するには、別の遺言書を作成する必要があります。

方法4:遺贈目的物の故意破棄(民法第1024条後段)

民法第1024条後段は「遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする」と定めています。たとえば「絵画をAに遺贈する」と書いた後に遺言者がその絵画を破棄した場合、その遺贈部分は撤回されたものとみなされます。

撤回時の方式の自由

民法第1022条は「遺言の方式に従って」とだけ規定しており、撤回する遺言と撤回される遺言の方式が同じである必要はありません。具体的には次のような組み合わせが可能です。

  • 公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回する
  • 自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回する
  • 秘密証書遺言を自筆証書遺言で撤回する

ただし、自筆証書遺言で撤回する場合は、自筆証書遺言の方式要件(全文自書・日付・氏名・押印など、民法第968条)を満たす必要があります。

一部変更と全部撤回

遺言は全部だけでなく一部だけを撤回することも可能です。たとえば「自宅をAに、預金をBに遺贈する」遺言のうち、預金についてのみ「Cに遺贈する」と書き換えれば、預金部分のみが撤回・変更され、自宅部分は元の遺言が有効に残ります。

ただし、新旧の関係が複雑になると相続人が混乱する原因となるため、できれば一度全部を撤回したうえで新たな遺言を作成するのが望ましいでしょう。

撤回権の放棄は不可(民法第1026条)

民法第1026条は「遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない」と定めています。「絶対に変更しない」と契約しても無効です。これは遺言の本質が「最終意思の尊重」にあるためで、誰も遺言者の最終意思を縛ることはできません。

撤回した遺言は復活するか(民法第1025条)

民法第1025条本文は「前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない」と定めています。これを「非復活の原則」といいます。

復活する例外

ただし、民法第1025条ただし書により、撤回の行為が「錯誤、詐欺又は強迫」によるものであった場合は、その撤回が取り消されたときに元の遺言が復活する余地があります。詐欺・強迫の場合は明文で規定され、錯誤の場合も判例・通説で同様に扱われます。

具体的な事例

事例1:新しい公正証書遺言で前の遺言をすべて撤回

「自宅を長男に相続させる」と書いた公正証書遺言を、3年後に「自宅を長女に相続させる」と書いた公正証書遺言で撤回するケース。新しい遺言の冒頭で「平成○年○月○日付の遺言を全部撤回する」と明記すれば、トラブルを防げます。

事例2:遺言書を破って撤回

自宅で保管していた自筆証書遺言を、本人が「やはり気が変わった」と破棄した場合、その遺言は撤回されたものとみなされます。ただし、家族が勝手に破棄した場合は撤回になりません(本人の意思によるものではないため)。

事例3:生前贈与による撤回擬制

「自宅をAに遺贈する」遺言を作成後、生存中にその自宅をBに贈与した場合、自宅についての遺贈部分は撤回されたものとみなされます(民法第1023条2項)。

公正証書遺言を変更する際の注意点

公正証書遺言の作成には費用と手間がかかります。撤回・変更のたびに新たな公正証書遺言を作成すると、その都度公証人手数料が発生します。一方、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回することも法的には可能ですが、後日の紛争リスクを考えると、原則として公正証書遺言は公正証書遺言で書き換えるのが安全です。法務局の自筆証書遺言保管制度を活用すれば、自筆証書でも紛失リスクを抑えられます。

当センターの対応事例

東久留米市にお住まいの80代の方からのご相談で、10年前に作成した公正証書遺言の内容を、二世帯住宅の建築をきっかけに変更したいというケースがありました。当センターでは、現在の家族構成・財産状況をヒアリングしたうえで、新しい公正証書遺言の文案を作成し、公証役場との調整までサポート。「前の遺言を全部撤回する」旨を明記した新たな遺言で、トラブルの芽を事前に摘み取りました。

まとめ

遺言書は一度作ったら終わりではなく、人生の節目で見直すことが大切です。民法第1022条以下の規定により、撤回・変更は自由にできますが、新旧の関係を明確にしないと相続人が混乱する原因にもなります。

当センターでは、遺言書の作成・見直し・撤回手続きを一貫してサポートしております。無料相談をぜひご利用ください。

遺言書の作成方法公正証書遺言の作り方もあわせてご覧ください。

当センターの実績 東久留米市の事例では、10年前の公正証書遺言を新しい家族構成にあわせて全部撤回・再作成。冒頭に「前遺言を全部撤回する」と明記することで、新旧2通の解釈紛争リスクを排除しました。

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※免責事項:本記事は2026年6月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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