要 この記事の要点
- 相続欠格は民法第891条の5事由(被相続人や相続人を殺害、遺言を妨害・偽造・破棄など)に該当した場合に当然に相続権を失う制度(手続き不要)
- 相続廃除は民法第892条に基づく、被相続人が推定相続人から虐待・重大な侮辱を受けたなどの場合に家庭裁判所への請求で相続権を奪う制度
- 相続廃除には生前廃除(民法第892条)と遺言廃除(民法第893条)の2種類。遺言廃除は遺言執行者が申立て
- 廃除・欠格があっても代襲相続は発生する(民法第887条2項)。ただし相続放棄の場合は代襲相続は発生しない(民法第939条)
相続が発生したとき、本来であれば法定相続人となる方が、特定の事由により相続権を失うことがあります。代表的なのが「相続欠格」と「相続廃除」という2つの制度です。両者は似ているようで、要件・手続き・効果が大きく異なります。
この記事では、民法に定められた相続欠格と相続廃除の違い、5つの欠格事由、廃除の手続き、代襲相続との関係まで、西東京市を拠点に多数の相続案件を扱う当センターが詳しく解説します。
相続権を失う3つのパターン
本来の相続人が相続権を失うパターンには、大きく分けて以下の3つがあります。
- 相続欠格(民法第891条):法定の事由に該当することにより、当然に(手続き不要で)相続権を失う制度
- 相続廃除(民法第892条・第893条):被相続人の意思に基づき、家庭裁判所への請求により相続権を奪う制度
- 相続放棄(民法第938条・第939条):相続人自身の意思で、家庭裁判所に申述して相続を放棄する制度
このうち欠格と廃除は、相続人の側に問題行為があったことを理由とする制度であり、放棄とは性質が異なります。
相続欠格(民法第891条)
相続欠格とは、民法第891条に列挙された5つの事由に該当した相続人が、法律上当然に相続権を失う制度です。家庭裁判所への申立てなどの手続きは不要で、欠格事由に該当した時点で相続権が消滅します。
5つの欠格事由
民法第891条は、以下の5つの欠格事由を定めています。
- 1号:故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられた者
- 2号:被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者(ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは除く)
- 3号:詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者
- 4号:詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者
- 5号:相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者
効果:当然失権・手続き不要
相続欠格は、欠格事由に該当した時点で当然に相続権を失います。家庭裁判所への申立てや判決などの手続きは不要です。ただし、実際の相続手続き(不動産登記など)の場面では、欠格者であることを示す「相続欠格証明書」(欠格者本人が作成・押印するもの)や、確定判決などの書面が求められることがあります。
相続欠格の宥恕(許し)の問題
相続欠格について、被相続人が「許す(宥恕する)」ことで欠格の効果を消滅させることができるかは、明文の規定がなく学説上の議論があります。判例は宥恕を認める傾向にありますが、実務では遺言による意思表示など慎重な対応が求められます。
相続廃除(民法第892条・第893条)
相続廃除とは、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたり、著しい非行があった場合に、被相続人が家庭裁判所に請求して相続権を奪う制度です。
廃除事由:虐待・重大な侮辱・著しい非行
民法第892条は、廃除事由として以下を定めています。
- 被相続人に対して虐待をしたとき
- 被相続人に重大な侮辱を加えたとき
- その他の著しい非行があったとき
「著しい非行」とは、犯罪行為、長期間の音信不通、財産の浪費、不貞行為など、社会通念に照らして著しく相続人としての地位を否定すべき行為を指します。家庭裁判所は事案ごとに慎重に判断します。
廃除の手続き:家庭裁判所への請求
相続廃除は、相続欠格と異なり、被相続人または遺言執行者が家庭裁判所に「推定相続人の廃除の審判」を申し立てる必要があります。家庭裁判所は申立内容を審理し、廃除事由が認められれば廃除の審判を行います。審判が確定すると、その推定相続人は相続権を失います。
生前廃除と遺言廃除の違い
相続廃除には、以下の2種類があります。
- 生前廃除(民法第892条):被相続人が生前に自ら家庭裁判所へ申立てを行う方法
- 遺言廃除(民法第893条):遺言で廃除の意思を示し、被相続人の死亡後に遺言執行者が家庭裁判所へ申立てを行う方法
遺言廃除を行う場合は、遺言で廃除の対象者と理由を明示するとともに、遺言執行者を指定しておくことが重要です。
廃除・欠格と代襲相続
相続欠格・相続廃除があった場合でも、その者に子(被相続人の孫など)がいれば、その子が代襲相続人として相続権を取得します。これは民法第887条2項に基づく代襲相続の規定によるものです。
これは相続放棄との大きな違いです。相続放棄は「最初から相続人でなかったものとみなす」(民法第939条)ため、放棄者の子に代襲相続は発生しません。
廃除・欠格の取消(民法第894条)
民法第894条は、被相続人が廃除を取り消すことができる旨を定めています。被相続人は、いつでも家庭裁判所に廃除の取消しを請求でき、また、遺言で取り消す方法も認められています。
欠格についても、前述の宥恕の議論があり、被相続人が遺言などで明確な意思表示をしている場合に効果が問題となります。
廃除・欠格と遺留分
相続廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人(配偶者・子・直系尊属)に限られます。遺留分のない兄弟姉妹は廃除の対象になりません。兄弟姉妹に相続させたくない場合は、遺言書で他の人に全財産を遺贈する形にすることで対応します。
欠格・廃除により相続権を失った者は、遺留分も失います。ただし代襲相続人は遺留分も承継します。
廃除・欠格と相続放棄の違い
3つの制度の違いを整理すると、以下のとおりです。
- 相続欠格:法定事由に該当 → 当然に相続権喪失 → 代襲相続発生
- 相続廃除:被相続人が請求 → 家裁の審判で相続権喪失 → 代襲相続発生
- 相続放棄:相続人が申述 → 初めから相続人でないとみなす → 代襲相続発生せず
このように、相続権の喪失原因によって代襲相続の有無が異なる点は、実務上きわめて重要です。
当センターでの対応事例
西東京市にお住まいのMさんは、長年音信不通で多額の借金を父に負わせてきた次男について、遺言書での廃除を検討されていました。当センターでは行政書士・税理士が連携し、遺言書での廃除の意思表示と遺言執行者の指定、そして代襲相続への配慮(次男に子がいる場合の処理)まで含めた包括的な遺言書作成をサポートしました。東久留米市・清瀬市・新座市など近隣エリアの方からも、廃除や欠格に関するご相談を多くいただいております。
まとめ
相続欠格と相続廃除は、いずれも問題行為のあった相続人から相続権を奪う制度ですが、要件・手続き・効果に大きな違いがあります。特に、廃除を検討する場合は、家庭裁判所での立証が必要となるため、生前のうちに証拠を整理し、遺言書の作成と併せて専門家に相談することが大切です。
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