要 この記事の要点
- 協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てられる(家事事件手続法第244条、別表第二の遺産分割事件)
- 調停で合意できなければ、調停は不成立となり自動的に審判手続きに移行する(家事事件手続法第272条第4項)
- 未分割のまま申告期限(10ヶ月)を過ぎると配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例が使えないが、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出で救済される
- 相続人間に紛争性がある場合は、早めに弁護士・税理士など専門家に相談することが重要
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要ですが、意見が対立してまとまらないことは珍しくありません。話し合いが平行線をたどると、手続きが進まず、税制上の特例が使えなくなるなどの不利益が生じることもあります。
この記事では、遺産分割協議がまとまらない場合の対処法として、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の流れや、未分割のまま相続税を申告する際の注意点について、西東京市の相続サポートセンターが解説します。
協議がまとまらない主な原因
遺産分割協議がまとまらない背景には、次のような原因があります。
- 不動産など分けにくい財産が中心で、分割方法に折り合いがつかない
- 特定の相続人が生前に贈与を受けていた(特別受益)ことをめぐる対立
- 被相続人の介護をした相続人が寄与分を主張する
- 相続人同士の感情的な対立や不信感
- 相続人の一部と連絡が取れない、非協力的である
まずは話し合いで解決を試みる
調停や審判に進む前に、まずは相続人同士の話し合い(協議)で解決を目指すのが基本です。感情的な対立が原因の場合、第三者である専門家が間に入ることで冷静な話し合いができるケースもあります。
ただし、相続人間に明確な争いがある場合の代理交渉は弁護士の業務範囲となるため(後述)、状況に応じて適切な専門家に相談することが大切です。
遺産分割調停の申立て
話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。遺産分割に関する処分は、家事事件手続法の別表第二に掲げる事件であり、調停による解決が図られます(家事事件手続法第244条)。
申立先の家庭裁判所
遺産分割調停の申立先は、原則として相手方(他の相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。相手方が複数いる場合は、そのうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。手続きの詳細は裁判所「遺産分割調停」のページで確認できます。
調停に必要な主な書類
- 遺産分割調停の申立書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書など財産に関する資料
調停の流れ・期間
遺産分割調停では、調停委員が当事者双方から事情を聞き、合意に向けた話し合いを進めます。当事者は原則として交互に調停室に入り、直接顔を合わせずに話を進められます。
調停は月1回程度のペースで開かれ、解決までに半年〜1年、あるいはそれ以上かかることもあります。当事者全員が合意すれば「調停成立」となり、調停調書が作成されます。この調停調書は確定判決と同一の効力を持ちます。
審判への移行
調停で合意に至らなかった場合、調停は不成立となり、手続きは自動的に「審判」に移行します(家事事件手続法第272条第4項)。審判では、裁判官が当事者の主張や資料をもとに、遺産の分割方法を決定します。
審判は当事者の合意によらず裁判官が判断するため、必ずしも希望どおりの結果になるとは限りません。だからこそ、可能な限り調停段階での合意を目指すことが望ましいといえます。
未分割の場合の相続税申告
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です(相続税法第27条)。遺産分割がまとまらなくても、この期限は延長されません。
特例が使えなくなる問題
遺産が未分割のまま申告期限を迎えると、次の重要な特例が原則として使えず、いったん高い税額で申告・納税することになります。
- 配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)
- 小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)
「申告期限後3年以内の分割見込書」による救済
ただし、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、申告期限から3年以内に遺産分割が成立した場合に、これらの特例を適用して税額の更正の請求ができます。これにより、払い過ぎた相続税の還付を受けられる可能性があります。未分割で申告する場合は、この書類の提出を忘れないことが重要です。
弁護士に依頼すべきケース
相続人間に明確な争いがある場合、当事者に代わって交渉したり、調停・審判で代理人となったりできるのは弁護士のみです。報酬を得る目的で法律事務(代理交渉など)を業として行うことは、弁護士でない者には禁止されています(弁護士法第72条、非弁行為の禁止)。
次のようなケースでは、弁護士への相談・依頼をおすすめします。
- 相続人同士の対立が深く、直接の話し合いが困難な場合
- 特別受益や寄与分などの法的な主張が絡む場合
- すでに調停・審判を申し立てられている、または申し立てる場合
当センターの対応
当センターでは、相続人間の話し合いが円満に進むよう、財産の評価や分割案の整理、必要書類の収集などをサポートいたします。相続税の申告が必要なケースでは、提携する税理士が未分割申告や分割見込書の対応を行います。
また、紛争性があり弁護士の関与が必要な場合には、提携する弁護士をご紹介いたします。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 遺産分割協議がまとまらないとき、どこに相談すればよいですか?
A. まずは相続の専門家に相談し、財産の整理や分割案の検討を行うことをおすすめします。話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。相続人間に明確な争いがある場合の代理交渉は弁護士の業務範囲となるため、状況に応じて弁護士への相談が必要です。
Q. 遺産分割調停はどこの家庭裁判所に申し立てますか?
A. 原則として相手方(他の相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。相手方が複数いる場合は、そのうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所で申し立てることができます。
Q. 遺産分割がまとまらないまま相続税の申告期限が来たらどうなりますか?
A. 相続税の申告期限は10ヶ月で延長されません。未分割のまま申告すると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が原則使えず、いったん高い税額で申告することになります。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、3年以内に分割が成立した際に特例を適用して更正の請求ができます。
Q. 調停で合意できなかったらどうなりますか?
A. 調停で合意に至らない場合は調停不成立となり、自動的に審判手続きに移行します(家事事件手続法第272条第4項)。審判では裁判官が当事者の主張と資料をもとに分割方法を決定します。当事者の合意によらないため希望どおりになるとは限らず、できる限り調停段階での合意が望ましいといえます。
まとめ
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判という手段があります。ただし、時間も労力もかかるため、できるだけ早い段階で専門家に相談し、円満な解決を目指すことが大切です。