要 この記事の要点
- 婚外子(非嫡出子)の相続分は、2013年9月4日最高裁違憲決定を受けた2013年12月の民法改正により、嫡出子と同等になった(民法第900条4号但書削除、平成25年法律第94号)
- 父との間の親子関係は認知(民法第779条)により発生。認知された子は出生時に遡って実子としての身分を持ち、相続権が認められる(民法第784条)
- 認知の方法:①任意認知(民法第780条、戸籍届出)、②遺言認知(民法第781条2項)、③強制認知(認知の訴え、民法第787条)
- 改正前(2013年9月4日以前)に既に確定した相続には改正法は遡及適用されない(同日以後に開始した相続から適用)
婚外子(非嫡出子)とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。かつて婚外子の相続分は嫡出子の2分の1とされていましたが、2013年の最高裁違憲決定と民法改正により、現在では嫡出子と同等の相続分が認められています。
この記事では、婚外子の相続権の現行ルール、認知の効力、過去の相続との関係、実務上の注意点について、西東京市の相続専門家が詳しく解説します。
婚外子(非嫡出子)とは
婚外子(こんがいし)または非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことを指します。これに対し、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を嫡出子といいます。
婚外子であっても、母との親子関係は出産の事実によって当然に成立しますが、父との親子関係は「認知」という法的手続きを経て初めて発生します。
2013年の重要な改正:相続分の平等化
最高裁2013年9月4日違憲決定
2013年(平成25年)9月4日、最高裁判所大法廷は、婚外子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法第900条4号但書前段の規定について「法の下の平等を定めた憲法第14条1項に違反する」として違憲との判断を下しました。これは1995年判例(合憲判断)を覆す画期的な決定でした。
平成25年12月11日施行の民法改正(法律第94号)
この違憲決定を受けて、2013年12月5日に民法の一部を改正する法律(平成25年法律第94号)が成立し、同年12月11日に公布・施行されました。改正により、民法第900条4号の但書前段(婚外子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定)が削除され、婚外子と嫡出子の法定相続分が同等になりました。
改正前は嫡出子の1/2だった相続分が同等に
改正前の民法第900条4号但書前段は、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一」と定めていました。例えば、嫡出子1名と婚外子1名の場合、嫡出子は3分の2、婚外子は3分の1の相続分とされていました。改正後は両者とも2分の1ずつの相続分となります。
父との親子関係の成立:認知制度(民法第779条)
民法第779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」と定めています。父との親子関係は、認知によって初めて法律上発生します。認知には以下の3つの方法があります。
任意認知(民法第780条)
父が任意に自分の子であると認める方法です。市区町村役場に「認知届」を提出することで効力が生じます。父が未成年者または成年被後見人であっても、法定代理人の同意なく認知することができます(民法第780条)。
遺言認知(民法第781条2項)
父が遺言によって認知をする方法です。「私は○○を認知する」旨を遺言書に記載し、遺言者の死亡後に遺言執行者が認知届を提出します。父が生前に認知できなかった事情がある場合に活用されます。
強制認知(民法第787条、認知の訴え)
父が任意認知に応じない場合、子・その直系卑属またはこれらの者の法定代理人が認知の訴えを提起することができます(民法第787条)。DNA鑑定の活用により、生物学的な父子関係の立証は以前より容易になっています。
認知の効力(民法第784条)
民法第784条は「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる」と定めています。つまり、認知された子は出生時から父の子であったものとして扱われ、相続においても実子としての権利を有します。
ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできません(同条但書)。例えば、認知前に他の相続人間で遺産分割が完了していた場合、認知された婚外子は価額のみによる支払いの請求権を有することになります(民法第910条)。
死後認知(民法第787条但書、3年以内)
父の死亡後であっても、その死亡の日から3年以内であれば、子は検察官を相手取って認知の訴えを提起することができます(民法第787条但書)。これを「死後認知」といいます。
死後認知が認められた場合、子は被相続人の相続人となります。ただし、既に他の相続人によって遺産分割が行われていた場合は、価額のみによる支払請求権を有します(民法第910条)。
母子関係は出生で当然成立
判例(最高裁昭和37年4月27日判決)により、母と非嫡出子との間の親子関係は、原則として母の認知を待たず、分娩の事実により当然に発生するとされています。したがって、戸籍上、出生届に母の氏名が記載されていれば、母との相続関係は問題なく認められます。
過去の相続への遡及適用の可否
2013年12月11日施行の改正法には附則があり、改正後の規定は2013年9月5日以後に開始した相続について適用されます。最高裁違憲決定の翌日以降に発生した相続が対象となります。
なお、2001年7月1日から2013年9月4日までに開始した相続については、最高裁の違憲決定の趣旨に照らし、既に確定した法律関係(遺産分割協議の合意、裁判による確定など)に影響を及ぼさない範囲で、改正法と同様の取扱いをするとの整理がなされています。既に遺産分割が完了している場合には基本的に蒸し返すことはできません。
実務上の注意点
戸籍上の婚外子の確認方法
被相続人の戸籍を出生から死亡まで遡って調査することで、認知された婚外子の有無を確認できます。父の戸籍には認知した子の記載があり、子の戸籍にも父の氏名が記載されます。相続人調査では、必ず被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を取得する必要があります。
認知届の手続き
認知届は、認知する父の本籍地または住所地、もしくは認知される子の本籍地の市区町村役場に提出します。届出書には、認知する者と認知される者の戸籍謄本などが必要です。
DNA鑑定との関係
認知請求訴訟では、DNA鑑定によって生物学的父子関係を立証することが一般的です。鑑定費用は概ね10万円から20万円程度が相場ですが、ケースにより異なります。任意の協力が得られない場合は、裁判所の鑑定命令によって行うこともあります。
当センターでの対応事例
まとめ
2013年の民法改正により、婚外子と嫡出子の法定相続分は完全に平等となりました。父との親子関係は認知によって成立し、認知の効力は出生時に遡及します。相続人調査では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を確実に取得し、認知された婚外子の存在を見落とさないことが重要です。
婚外子に関する相続でお悩みの方は、専門家への相談をおすすめします。当センターでは無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
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