要 この記事の要点
- 数次相続とは、遺産分割協議などの相続手続きが完了する前に相続人が死亡し、次の相続が開始した状態のこと
- 代襲相続との違い:代襲相続は相続開始「前」に相続人が死亡、数次相続は相続開始「後」に相続人が死亡している
- 相続登記は、中間の相続が単独相続であるなど一定の要件を満たせば中間省略登記が可能(登記の先例)
- 相続税では、10年以内に続けて相続があった場合に税負担を軽減する「相次相続控除」がある(相続税法第20条)
相続手続きには時間がかかることが多く、その途中で相続人の一人が亡くなってしまうことがあります。このように、ある相続の手続きが終わらないうちに次の相続が発生した状態を「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。
数次相続は手続きが複雑になりやすく、遺産分割協議書の書き方や相続登記、相続税の取り扱いにも注意が必要です。この記事では、西東京市の相続サポートセンターが、数次相続の基本から実務上のポイントまで解説します。
数次相続とは
数次相続とは、被相続人(最初に亡くなった方)の遺産分割協議や相続手続きが完了する前に、その相続人が死亡し、さらに次の相続が開始した状態をいいます。
例えば、父が亡くなり、その遺産分割協議が終わらないうちに母(父の相続人)も亡くなった、というケースが典型です。この場合、父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)が連続して発生し、母の相続人が父の相続手続きにも関与することになります。
代襲相続との違い
数次相続とよく混同されるのが「代襲相続」です。両者は「相続人が死亡したタイミング」で明確に区別されます。
- 代襲相続:相続の開始「前」(被相続人より先)に、本来の相続人が死亡している場合。その子(孫など)が代わって相続する(民法第887条第2項など)
- 数次相続:相続の開始「後」に、相続人が遺産分割前に死亡した場合。死亡した相続人の地位(相続する権利)が、その相続人へ引き継がれる
つまり、被相続人より先に亡くなっていれば代襲相続、被相続人が亡くなった後に亡くなれば数次相続です。詳しくは代襲相続の記事もあわせてご確認ください。
数次相続で相続人が増える問題
数次相続では、一次相続の遺産分割に、二次相続で新たに相続人となった人全員が参加することになります。そのため、当初は少人数だった相続人が、数次相続によって一気に増えることがあります。
相続人が増えると、遺産分割協議での合意形成が難しくなったり、連絡が取れない相続人が出てきたりして、手続きが長期化しやすくなります。相続手続きは、放置せず早めに進めることが重要です。
遺産分割協議書の書き方
数次相続の遺産分割協議書では、二次相続で亡くなった方について、「相続人としての地位」と「被相続人としての地位」を併記するのがポイントです。
例えば、亡くなった母について、「父の相続人であり、かつ母自身の被相続人でもある」ことを明記します。協議に参加する人が、どの相続における相続人なのかを明確にすることで、後の登記や手続きがスムーズになります。書き方が複雑になるため、専門家に作成を依頼するのが安心です。
相続登記の扱い(中間省略登記の可否)
数次相続で不動産を相続する場合、本来は一次相続・二次相続それぞれについて登記を行うのが原則です。しかし、一定の要件を満たす場合には、中間の登記を省略して直接最終の相続人へ名義を移す「中間省略登記」が認められています。
登記の先例によれば、中間の相続が単独相続である(相続人が一人だけ、あるいは遺産分割協議・相続放棄などの結果として単独相続となった)場合には、中間省略登記が可能とされています。これにより、登録免許税や手間を軽減できる場合があります。ただし、中間の相続が共同相続のままである場合は原則として省略できず、個別の判断が必要です。
相次相続控除(相続税法第20条)
短い期間に相続が続くと、同じ財産に何度も相続税がかかり、税負担が重くなります。これを緩和するのが「相次相続控除」です(相続税法第20条)。
相次相続控除は、今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続(一次相続)で財産を取得し相続税を課されていた場合に、今回の相続(二次相続)の相続税から一定額を控除できる制度です。控除額は、前回の相続からの経過年数に応じて、1年につき10%の割合で逓減します。つまり、前回の相続から間もないほど控除額が大きくなります。
数次相続では相続が短期間に連続するため、この相次相続控除が適用できるケースが多くあります。適用には要件があるため、税理士に確認することをおすすめします。
手続きが複雑化するため専門家推奨
数次相続は、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、相続登記、相続税申告のいずれの場面でも複雑になりがちです。特に相続人が多数に及ぶ場合や、複数の相続が重なっている場合は、専門家によるサポートが有効です。
当センターの対応事例
当センターでは、新座市にお住まいのお客様から、お父様の相続手続き中にお母様が亡くなられた数次相続のご相談を受けたことがあります。相続人の確定から遺産分割協議書の作成、相続登記、相次相続控除を踏まえた相続税申告まで、提携する司法書士・税理士と連携してワンストップで対応いたしました。
よくある質問
Q. 数次相続と代襲相続は何が違いますか?
A. 相続人が死亡したタイミングが違います。代襲相続は、本来の相続人が被相続人より「先」に亡くなっている場合で、その子などが代わりに相続します。数次相続は、被相続人が亡くなった「後」に、遺産分割前の相続人が亡くなった場合で、その地位が次の相続人へ引き継がれます。
Q. 数次相続の遺産分割協議書はどう書けばよいですか?
A. 二次相続で亡くなった方について、「一次相続の相続人であり、かつ被相続人でもある」という両方の地位を併記するのがポイントです。誰がどの相続における相続人なのかを明確にすることで、後の登記や手続きが円滑になります。書き方が複雑になるため、専門家への依頼が安心です。
Q. 数次相続の相続登記で中間省略はできますか?
A. 中間の相続が単独相続である(相続人が一人、または遺産分割・相続放棄の結果として単独相続となった)などの要件を満たす場合には、中間の登記を省略して最終の相続人へ直接登記する中間省略登記が認められています。中間が共同相続のままの場合は原則として省略できず、個別の判断が必要です。
Q. 短期間に相続が続いた場合、相続税は軽減されますか?
A. 相続開始前10年以内に、被相続人が前の相続で財産を取得し相続税を課されていた場合、「相次相続控除」(相続税法第20条)により今回の相続税から一定額を控除できます。控除額は前回の相続からの経過年数に応じ1年につき10%の割合で逓減します。適用には要件があるため税理士にご確認ください。
まとめ
数次相続は、相続手続きの途中で相続人が亡くなり、次の相続が開始した状態です。代襲相続とは死亡のタイミングで区別され、遺産分割協議書の書き方や相続登記、相続税の相次相続控除など、実務上の注意点が多くあります。