要 この記事の要点
- 手放す手段は売却・相続放棄・相続土地国庫帰属制度・寄付の4つ。それぞれ要件・費用・使えるタイミングが大きく違います
- 相続放棄は原則3ヶ月以内(民法第915条)。この期限を過ぎたら、残る選択肢は売却・国庫帰属・寄付の3つです
- 相続土地国庫帰属制度は建物があると使えず、解体費と負担金の持ち出しが生じます。「タダで手放せる制度」ではありません
- 放置して特定空家等・管理不全空家等の勧告を受けると住宅用地の特例が外れ、土地の課税標準が最大6倍になります
「実家を相続したが、誰も住まないし売れる見込みもない」。西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市のお客様からも、こうしたご相談を数多くいただきます。使い道のない空き家は、持っているだけで固定資産税と管理の負担が続き、放置すれば行政指導や損害賠償のリスクまで抱えることになります。
この記事では、手放すための4つの方法を要件・費用・期間の目安で並べて比較し、どの順序で検討すればよいかを整理します。空き家全般の活用方法や放置リスクの詳細、3,000万円特別控除の適用要件については空き家を相続したらどうする?で解説していますので、あわせてご覧ください。
まず4つの方法を一覧で比較する
選択肢を並べると、それぞれの向き不向きがはっきりします。金額・期間はいずれも目安であり、物件の状態や地域によって大きく変わります。
| 方法 | 主な要件 | 費用の目安 | 期間の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 売却 | 相続登記を済ませていること | 仲介手数料・登記費用・残置物処分費。売却益が出れば譲渡所得税 | 仲介は数ヶ月〜/買取は数週間〜1ヶ月程度 | 立地に一定の需要がある物件 |
| 相続放棄 | 相続開始を知った時から原則3ヶ月以内。他の遺産も一切放棄 | 申述の実費は少額。清算人選任が必要なら予納金の負担 | 申述の受理まで数週間〜1ヶ月程度 | 負債が多い/プラス財産がほぼない |
| 国庫帰属 | 相続で取得した土地であること。建物がないこと等 | 解体費+審査手数料14,000円/筆+負担金(宅地は原則20万円) | 審査に半年〜1年程度かかることがある | 売れない土地で、解体費を出せる場合 |
| 寄付・無償譲渡 | 受け入れ先の同意。自治体は公共利用の予定が必要 | 登記費用。法人への譲渡はみなし譲渡課税に注意 | 交渉次第。数ヶ月かかることも | 隣地所有者にメリットがある土地 |
方法1|売却する
最も確実に手放せる方法です。ただし「売る」といっても入口は複数あり、物件の状態によって適した売り方が変わります。
売却の前提|相続登記が終わっていること
被相続人名義のままでは売却できません。買主に所有権を移すには、いったん相続人名義にしておく必要があるためです。2024年4月1日から相続登記は義務化されており(不動産登記法第76条の2)、いずれにせよ避けて通れません。買主が決まってから登記に着手すると決済に間に合わないこともあるため、売却を考えるなら先に登記を進めましょう。
3つの売り方の使い分け
| 売り方 | 価格の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一般の不動産仲介 | 市場価格に近い | 買主が見つかるまで時間がかかる。契約不適合責任を負う可能性 |
| 買取業者 | 市場相場の6〜7割程度が目安 | 価格は下がるが早い。契約不適合責任を免責としてもらえることが多い |
| 隣地所有者・個人間 | 交渉次第(低額のことも) | 著しく低額だと贈与とみなされる可能性。契約書は専門家を介して作成 |
なお、宅地建物取引業者が受け取れる仲介手数料には上限があり、売買価格400万円超では「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限です。売買価格800万円以下の低廉な空き家等については、売主から受け取れる報酬の上限が33万円(税込)まで引き上げられる特例があります。地方や条件の悪い物件でも仲介を引き受けてもらいやすくする趣旨の制度です。
税金の特例を確認してから売り出す
売却益が出た場合は譲渡所得として課税されますが、相続した空き家については相続空き家の3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条第3項)を使える可能性があります。ただし要件が細かく、区分所有建物登記がされている建物(分譲マンション)は対象外である点には特に注意が必要です。相続税を納めている場合は取得費加算の特例(同法第39条)も検討できます。適用要件の詳細は空き家を相続したらどうする?で整理しています。売り出す前に、どの特例が使えるかを確認しておくと手取り額が変わります。
方法2|相続放棄する
そもそも相続しないという選択です。家庭裁判所に相続の放棄を申述し、受理されると初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。
期限は原則3ヶ月
相続放棄ができるのは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内です(民法第915条第1項)。この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、財産調査に時間がかかる場合には家庭裁判所に伸長を申し立てることができます。
空き家だけを放棄することはできない
相続放棄は「この財産はいらないが、この財産はもらう」という選び方ができません。預貯金も他の不動産もすべて放棄することになります。したがって、空き家以外にまとまったプラスの財産がある場合、放棄は割に合わないケースが多くなります。また、遺産の一部を処分してしまうと単純承認したものとみなされ、放棄ができなくなる点にも注意が必要です。
放棄しても管理義務が残る場合がある
ここが誤解されやすいところです。民法第940条は、相続の放棄をした者がその放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存しなければならないと定めています。
相続人全員が放棄して引き渡す相手がいない場合には、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることになります。この申立てには予納金が必要とされるのが一般的で、金額は事案によりますが数十万円から100万円程度になることもあります。「放棄すればあとは知らない」とはいかない場合があることを踏まえて判断してください。詳しくは相続放棄の手続きをご覧ください。
方法3|相続土地国庫帰属制度を使う
2023年4月27日に施行された「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づく制度です。相続または遺贈によって取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国に引き取ってもらえます。
建物があると申請できない
この制度における最大のハードルです。建物が存する土地は却下事由とされているため、空き家を国庫帰属させるには先に解体して更地にしなければなりません。木造住宅の解体費用は1棟あたり100万円から300万円程度が目安で、延床面積・立地・アスベストの有無によって変動します。前面道路が狭く重機を入れられない現場では割高になります。自治体によっては老朽危険空き家の除却補助金を用意している場合があるため、事前に窓口へ確認しておくとよいでしょう。
費用の内訳
- 審査手数料:土地1筆あたり14,000円。却下・不承認となっても返還されません
- 負担金:承認された場合に納付します。宅地は原則20万円ですが、市街化区域や用途地域が指定されている区域内の宅地、農地については面積に応じて算定され、より高額になることがあります
- 解体費:上記のとおり100万円から300万円程度が目安
引き取ってもらえない土地
次のような土地は、却下または不承認となります。
- 建物が存する土地
- 担保権や使用収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路など他人による使用が予定されている土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地
- 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分の費用または労力を要する土地
- 管理を阻害する工作物・車両・樹木等が地上に存する土地、除去が必要な地下埋設物がある土地
解体費と負担金を合わせると相応の持ち出しになるため、「無料で手放せる制度」ではありません。それでも、固定資産税と管理責任を将来にわたって負い続けるより有利と判断できるケースはあります。制度の詳細は相続土地国庫帰属制度で解説しています。
方法4|寄付・無償譲渡する
「タダでいいから引き取ってほしい」という考え方ですが、実務上は最もハードルが高い方法です。
| 相手先 | 実現の可能性 | 税務上の注意 |
|---|---|---|
| 自治体 | 公共利用の具体的な予定がなければ受け付けられないことが多い | - |
| 法人(NPO・社会福祉法人等) | 活用目的が合えば可能性あり | 個人から法人への無償譲渡は時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得税が課されることがあります(所得税法第59条) |
| 隣地所有者・個人 | 4つの相手先の中では最も成約しやすい | 受け取った側に贈与税が生じる可能性があります |
隣地所有者にとっては、土地の拡張や接道条件の改善というメリットがあるため、話が進むことが少なくありません。ただし無償だと相手側に贈与税の問題が生じるため、低額でも有償譲渡の形をとるのが実務上は一般的です。
放置した場合に何が起きるか
固定資産税の負担が跳ね上がる
住宅が建っている土地には、地方税法第349条の3の2による住宅用地の特例が適用され、200平方メートル以下の部分について固定資産税の課税標準が6分の1に、それを超える部分は3分の1に軽減されています(都市計画税はそれぞれ3分の1、3分の2)。
ところが、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づいて特定空家等または管理不全空家等に指定され、市区町村から勧告を受けると、この特例の対象から除外されます。結果として土地の課税標準が最大6倍になり、税負担が大きく増えます。2023年の法改正で、特定空家等になる前の段階である管理不全空家等も勧告の対象に加えられており、行政が早い段階で動けるようになっています。
管理責任と損害賠償のリスク
建物の設置または保存に瑕疵があり、それによって他人に損害が生じたときは、所有者が損害賠償責任を負うことがあります(民法第717条)。外壁材の落下、瓦の飛散、ブロック塀の倒壊、庭木の越境、放火や不法侵入といったリスクは、放置期間が長くなるほど高まります。遠方に住んでいて年に数回しか見に行けない場合は、地元の空き家管理サービスの利用も検討に値します。
行政代執行の費用は所有者負担
特定空家等について、勧告・命令を経てもなお改善されない場合、市区町村が行政代執行によって解体等を行うことがあります。この場合、要した費用は所有者に請求されます。自分で業者を選んで解体するより割高になりやすく、最も避けたい結末です。
検討する順序
4つの方法は同列ではありません。実務上は次の順序で考えるのが合理的です。
- 相続開始から3ヶ月以内なら、まず相続放棄の要否を判断する。負債が多い、あるいはプラスの財産がほとんどないなら放棄が最有力です。他に相続したい財産があるなら放棄はしません。
- 相続すると決めたら、すぐに相続登記を行う。売却も寄付も国庫帰属も、名義が被相続人のままではできません。
- 売却の可能性を確かめる。仲介会社に査定を依頼し、並行して買取業者にも打診します。自治体の空き家バンクへの登録は費用がかからないため、保険として同時に進めておくとよいでしょう。
- 売れない場合、隣地所有者に打診する。成約率が比較的高い相手先です。
- それでも難しければ、解体+国庫帰属を検討する。解体費と負担金の総額と、固定資産税・管理費を今後何年払い続けるかを比べて判断します。
相続人が複数いる場合、この判断を一人で決めることはできません。誰が取得するのか、費用を誰が負担するのかを含めて遺産分割協議で決める必要があります。兄弟間での分け方については実家を兄弟で相続したらもあわせてご覧ください。
まとめ
使い道のない空き家を手放す方法は、売却・相続放棄・相続土地国庫帰属制度・寄付の4つです。相続放棄は原則3ヶ月という期限があり、しかも他の遺産もすべて放棄することになるため、使える場面は限られます。期限を過ぎている場合、現実的な選択肢は売却を軸に据え、そのうえで隣地への譲渡や国庫帰属を検討するという流れになります。
相続土地国庫帰属制度は「タダで手放せる制度」ではなく、建物の解体費と審査手数料14,000円、宅地なら原則20万円の負担金が必要です。それでも、放置して特定空家等の勧告を受け、住宅用地の特例が外れて固定資産税が跳ね上がり、最終的に行政代執行の費用を請求されるという結末に比べれば、早く動くほうが負担は小さくなります。
費用・期間はいずれも目安であり、物件の状態や地域によって変わります。西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市の空き家について、どの方法が現実的か迷われている方は、まずは現状の整理からご相談ください。
▶ 使い道のない空き家を、どう手放せばよいか迷っていませんか?
相続放棄の期限判断、相続登記、売却の段取り、国庫帰属の要件確認まで、税理士・行政書士・司法書士が連携して整理します。まずは物件の状況をお聞かせください。
西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. いらない空き家を手放す方法のうち、どれが一番現実的ですか?
最も確実なのは売却です。一般の仲介で買い手がつかない場合は買取業者、次に隣地所有者への譲渡という順で検討するのが現実的です。相続放棄は原則3ヶ月以内という期限があり、他の遺産も一切受け取れなくなるため、預貯金など他にプラスの財産がある場合には選びにくい選択肢です。相続土地国庫帰属制度は建物があると使えず、解体費と負担金の持ち出しが生じます。
Q2. 相続放棄をすれば空き家の管理責任からも解放されますか?
必ずしもそうではありません。民法第940条により、放棄した人がその放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存する義務を負います。全員が放棄して引き渡す相手がいない場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることになり、予納金を求められるのが一般的です。
Q3. 空き家を放置すると固定資産税はどうなりますか?
住宅用地には地方税法第349条の3の2の特例があり、200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1に軽減されています。しかし特定空家等または管理不全空家等に指定されて勧告を受けると特例の対象から除外され、土地の課税標準が最大6倍になります。実際の増加額は物件により異なりますので、目安としてお考えください。
Q4. 相続土地国庫帰属制度を使えばタダで手放せますか?
いいえ。建物があると申請できないため先に解体が必要で、木造住宅なら100万円から300万円程度が目安です。加えて審査手数料が土地1筆あたり14,000円かかり、却下・不承認でも返還されません。承認されれば負担金の納付が必要で、宅地は原則20万円、市街化区域内の宅地などは面積に応じて算定されます。金額はいずれも目安です。