不動産2026年9月25日最終更新: 2026.09.25

この記事の要点

  • 分け方は現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つ。実家1軒を兄弟で分ける場面では代償分割か換価分割が中心になります
  • 共有名義は「決められない状態」を固定する選択。変更行為は共有者全員の同意(民法第251条)、管理行為は持分価格の過半数(民法第252条)が必要です
  • 代償分割では代償金の資金手当てが最大の論点。預貯金の配分調整や生命保険金の活用で対応できる場合があります
  • 話がまとまらないときは家庭裁判所の調停へ。相続開始から10年を過ぎると特別受益・寄与分を主張できなくなります(民法第904条の3)

兄弟姉妹で実家を相続したとき、最初にぶつかるのが「どう分けるか」という問題です。預貯金なら金額で割り切れますが、不動産は物理的に切り分けられません。しかも実家には思い出があり、親の介護をした人・していない人という感情の差もあって、単純な数字の話にならないのが実情です。

この記事では、実家という1つの不動産を兄弟でどう分けるかに絞って、4つの分割方法を比較しながら選び方を整理します。実家を売るのか貸すのか住むのかという用途の判断については相続した実家はどうする?を、すでに共有名義になってしまった不動産の解消については共有不動産の相続をご覧ください。

4つの分割方法を比較する

遺産分割の方法は、大きく4つに整理できます。実家1軒を兄弟で分けるという場面では、それぞれの向き不向きがはっきり分かれます。

分割方法 内容 メリット デメリット
現物分割財産を現物のまま各人に割り当てる。長男が実家、次男が預貯金など手続きが単純。売却の手間や税金が生じない財産の価値に差があると不公平になりやすい
代償分割一人が実家を取得し、他の相続人に代償金を支払う実家を残せる。金額で公平を調整できる取得者に資金力が必要。評価額の合意が難しい
換価分割売却して現金化し、代金を分ける最も公平に分けやすい。評価で揉めない実家がなくなる。譲渡所得税と売却費用がかかる
共有分割持分を定めて共有名義で登記するその場では平等に見える。結論を先送りできる将来の売却・改築に全員の同意が必要。世代が下ると収拾がつかなくなる

実家以外に十分な財産があるかどうかが分かれ目

選び方の出発点はシンプルです。相続財産の中で実家の占める割合を見てください。

  • 実家が財産の一部にすぎない場合:現物分割で調整できます。実家を取得する人の預貯金の取り分を減らせば、おおむね公平になります
  • 実家が財産の大半を占める場合:現物分割では調整できません。誰かが住み続けたいなら代償分割、誰も住まないなら換価分割が基本線になります

統計的にも、相続財産に占める不動産の割合は大きく、実家が財産の大半という家庭は珍しくありません。だからこそ、代償分割と換価分割のどちらを選ぶかが実務上の中心的な論点になります。

共有名義にすることのリスク

「とりあえず法定相続分どおり共有にしておこう」という結論は、話し合いの場では最も合意しやすい選択肢です。しかし、共有には民法上の制約があり、後々の身動きが取れなくなります。

変更行為には全員の同意が必要(民法第251条)

民法第251条第1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更(形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えることができないと定めています。売却や取壊し、大規模なリフォームは全員の同意が必要ということです。兄弟のうち一人でも反対すれば、実家は動かせません。

管理行為は持分価格の過半数(民法第252条)

民法第252条第1項は、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めると定めています。賃貸に出す、管理会社と契約するといった行為がこれにあたります。頭数の過半数ではなく持分の価格の過半数である点に注意してください。3人兄弟が3分の1ずつ持っている場合、2人が賛成すれば管理行為はできますが、残り1人が使い続けているといった実態があると、実際には円滑に進みません。

世代が下るほど収拾がつかなくなる

共有の最大の問題は時間です。共有者の一人が亡くなると、その持分はさらにその子どもたちに分かれます。当初3人だった共有者が、次の世代で6人、その次で10人以上になることも珍しくありません。顔も知らない親族と合意しなければ何も決められない状態に陥ります。

共有状態を解消したい場合、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できます(民法第256条第1項)。協議が調わないときは裁判所に分割を請求でき(民法第258条)、裁判所は現物分割、賠償分割、それが困難なときは競売による分割を命じます。ただし、ここまで来ると時間も費用もかかります。共有の詳細な解消手段は共有不動産の相続で解説しています。

共有をあえて選ぶとしたら、「近いうちに売却する前提で、売却手続きを進めるまでの暫定措置として共有登記する」といった、出口が見えている場合に限るべきでしょう。

代償分割を選ぶ場合の実務

兄弟のうち一人が実家に住み続ける、あるいは残したいという場合の基本形が代償分割です。ただし、実務では2つの壁があります。

壁1|不動産の評価額をいくらとするか

代償金の額は「実家の評価額×他の相続人の相続分」で計算します。したがって評価額をいくらとするかで代償金が変わり、ここが対立の火種になります。使われる評価の指標には次のようなものがあります。

評価の指標 水準の傾向 使いどころ
固定資産税評価額実勢価格より低めになる傾向取得する側が主張しやすい
相続税評価額(路線価等)実勢価格との間に開きが出ることがある相続税申告と整合させたい場合
不動産会社の査定価格実勢に近い。複数社で差が出る代償金を受け取る側が主張しやすい
不動産鑑定士の鑑定評価額中立性が高い対立が深く客観的な数字が必要な場合。鑑定費用がかかります

どの指標を使うかについて法律上の決まりはなく、相続人全員が合意すればどれでも構いません。実務では、複数の不動産会社の査定を取り、その中間値を基準にするといった落としどころがよく用いられます。対立が深い場合は鑑定を入れることもありますが、費用がかかるため、金額の差と鑑定費用を比べて判断します。

壁2|代償金の資金をどう用意するか

評価額で合意できても、支払う現金がなければ代償分割は成立しません。資金手当ての選択肢を整理します。

  • 相続財産の預貯金を充てる:最も現実的な方法です。実家を取得する人が預貯金の取り分を減らし、その分を他の相続人に多く配分すれば、実質的に代償金を支払ったのと同じ効果になります
  • 生命保険金を活用する:被相続人が生前に、実家を取得させたい相続人を受取人とする生命保険に加入しておく方法です。死亡保険金は受取人固有の財産とされるため、代償金の原資として使いやすくなります。相続対策として事前に準備しておく発想です
  • 金融機関から借り入れる:取得する不動産を担保に融資を受ける方法です。返済能力の審査があり、高齢の相続人には現実的でない場合があります
  • 分割払いとする:協議書に支払時期・回数・方法を明記します。ただし後日の未払いリスクがあるため、受け取る側は慎重に検討すべきです。公正証書にして強制執行認諾文言を付けておく方法もあります

どうしても資金の目処が立たない場合は、換価分割への切り替えを早めに検討したほうがよいでしょう。「払える見込みがないのに代償分割で合意する」のが、後の紛争の典型的な入口です。

協議書には「代償分割である」と明記する

代償金の支払いを遺産分割協議書に記載せずに現金を渡すと、税務上は贈与とみなされるおそれがあります。「甲は、乙に対し、本件不動産を取得した代償として金○○円を令和○年○月○日までに支払う」といった形で、代償分割であることと支払条件を明記してください。書き方の具体例は遺産分割協議書のひな形で紹介しています。

換価分割を選ぶ場合の実務

誰も住まない、代償金も用意できないという場合、最も公平に分けられるのが換価分割です。

売却の前に相続登記が必要

被相続人名義のままでは売却できません。換価分割の場合、相続人全員の共有名義で登記してから売却する方法と、代表者一人の名義に登記して売却し代金を分配する方法があります。後者の場合、遺産分割協議書に換価分割のための便宜的な登記であることと分配割合を明記しておかないと、代表者から他の相続人への贈与とみなされるおそれがあります。

譲渡所得税と売却費用を差し引いて分ける

売却益が出れば譲渡所得として所得税・住民税の課税対象になります。換価分割では、原則として各相続人が取得する持分に応じてそれぞれ譲渡所得を申告します。仲介手数料、測量費、残置物処分費、登記費用といった実費もかかります。

売却代金をそのまま頭割りにすると、後から税金の請求が来たときに「聞いていない」と揉めることがあります。諸費用と税額を控除した後の金額を分配するという取り決めを、事前に協議書に書き込んでおきましょう。

使える可能性のある特例

相続した空き家を売却する場合、相続空き家の3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条第3項)を検討できます。ただし要件が細かく、区分所有建物登記がされている建物は対象外です。また、相続税を納めている場合は取得費加算の特例(同法第39条)も使える可能性があります。適用可否は個別の事情によりますので、売却前に確認してください。

話がまとまらない場合の進め方

まず数字と選択肢を共有する

兄弟間の対立は、情報の非対称から生まれることが少なくありません。実家の近くに住む相続人だけが固定資産税の額や修繕の必要性を知っていて、遠方の相続人は「不動産をもらえて得をしている」と感じている、というすれ違いです。査定書、固定資産税の納税通知書、修繕見積り、預貯金の残高証明といった資料を全員で共有するだけで、話が進むことがあります。

遺産分割調停の申立て

協議が調わないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停は裁判官と調停委員が間に入る話し合いの手続きで、当事者が直接顔を合わせずに進められる点が特徴です。申立先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。西東京市・東久留米市・清瀬市にお住まいの方は、東京家庭裁判所立川支部が管轄となる場合が多くなります。新座市など埼玉県内にお住まいの相手方に申し立てる場合は、さいたま家庭裁判所の該当する支部が管轄です。

調停でも合意に至らないときは審判に移行し、裁判官が分割方法を定めます。調停・審判の流れは遺産分割協議がまとまらない場合で詳しく解説しています。

10年の期限に注意(民法第904条の3)

2023年4月1日に施行された民法第904条の3により、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく法定相続分(または指定相続分)によることとされました。つまり、10年を過ぎると特別受益や寄与分の主張ができなくなります。

「兄は生前に住宅資金を出してもらった」「私は介護をした」といった事情を分割に反映させたいのであれば、10年以内に協議をまとめるか、家庭裁判所に遺産分割の請求をしておく必要があります。先送りには期限があると考えてください。

まとめ

実家を兄弟で相続したときの分け方は、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つです。実家が相続財産の大半を占めるなら、現物分割では公平に分けられません。誰かが住み続けるなら代償分割、誰も住まないなら換価分割というのが基本線になります。

共有名義は合意しやすい反面、売却や改築に全員の同意が必要になり(民法第251条)、世代が下るほど関係者が増えて収拾がつかなくなります。出口が見えている場合を除き、避けたほうが無難です。

代償分割では、評価額の合意と代償金の資金手当てが山場になります。相続財産の預貯金の配分で調整する、生命保険金を原資にするといった方法があります。換価分割では、諸費用と譲渡所得税を控除した後の金額で分配する取り決めを協議書に書き込んでおきましょう。

そして、相続開始から10年を過ぎると特別受益や寄与分を主張できなくなります。話がこじれそうな段階でも、第三者を入れて整理すれば道が開けることは少なくありません。西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市のご家族から数多くのご相談をいただいています。まずは現状をお聞かせください。

実家の分け方で、兄弟の話し合いが進まずお困りではありませんか?

不動産の評価、代償金の算定と資金手当て、換価分割の段取り、協議書への記載方法まで、税理士・行政書士・司法書士が連携して整理します。感情的な対立になる前のご相談をおすすめします。

西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. 実家を兄弟で共有名義にするのは避けたほうがよいのですか?

当面の結論を先送りできる一方、将来の意思決定が難しくなるため慎重に検討すべきです。共有物の変更行為には共有者全員の同意が必要で(民法第251条第1項)、売却や大規模な改築には全員の合意が要ります。管理行為は各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます(民法第252条第1項)。さらに共有者が亡くなれば持分が次の世代に分かれ、関係者が増えて話がまとまりにくくなります。

Q2. 代償金を用意できない場合はどうすればよいですか?

相続財産の預貯金を代償金の原資に充て、不動産を取得する人の預貯金の取り分を減らす形で調整する方法が現実的です。生命保険金を原資にする、金融機関から借り入れる、分割払いの条項を協議書に入れるといった方法もあります。分割払いは後日の未払いリスクがあるため、支払時期・方法を明記してください。見込みが立たない場合は換価分割への切り替えを検討します。

Q3. 換価分割にすると税金はどうなりますか?

売却によって譲渡益が出れば譲渡所得として課税されます。換価分割では原則として各相続人が持分に応じてそれぞれ申告します。売却代金をそのまま分けると手取りが想定より減ることがあるため、譲渡費用と税額を差し引いた後の金額で分配する取り決めにしておくと揉めにくくなります。相続税を納めている場合は取得費加算の特例(租税特別措置法第39条)も検討できます。

Q4. 兄弟で話がまとまらない場合はどうなりますか?

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。申立先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。西東京市・東久留米市・清瀬市にお住まいの方は東京家庭裁判所立川支部が管轄となる場合が多くなります。調停でも合意できないときは審判に移行します。なお相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなります(民法第904条の3)。

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※免責事項:本記事は2026年9月時点の情報です。法令・通達等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。制度の内容は変更される場合があります。記載の費用・税額・期間はいずれも目安です。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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