要 この記事の要点
- 受給権者死亡届(報告書)の期限は、厚生年金保険は10日以内、国民年金は14日以内。ただしマイナンバーが日本年金機構に収録されていれば原則として提出を省略できます
- 年金は後払いのため、亡くなった月の分まで必ず未支給が発生します。請求しなければ受け取れません
- 請求できるのは生計を同じくしていた一定範囲の遺族で、順位が定められています(国民年金法第19条・厚生年金保険法第37条)
- 未支給年金は相続財産ではなく、受け取った遺族固有の権利。税務上は一時所得として扱われます
ご家族が亡くなられたあと、年金の手続きは「止める」と「もらう」の二つに分かれます。止めるのが受給権者死亡届(報告書)、もらうのが未支給年金の請求です。この二つは同時に行うのが実務の基本ですが、後者を知らないまま済ませてしまい、受け取れたはずのお金を取り逃がすご家庭が少なくありません。
西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市のお客様からも「年金は自動で止まると聞いたので何もしていない」というお話をよくうかがいます。止めるほうは自動化が進んでいますが、もらうほうは請求しない限り一円も支払われません。この記事で、期限と手順、そして受け取れる方の範囲を整理します。
まず押さえる――年金は「後払い」である
公的年金は偶数月の15日に、その前の2か月分がまとめて支払われます。支払日である15日が土曜・日曜・祝日にあたる場合は、その直前の平日に支払われる取扱いです。たとえば10月15日の支払いは、8月分と9月分です。
そして、年金の支給は権利が消滅した日の属する月で終わるものとされています(国民年金法第18条第1項)。つまり亡くなった月の分までは受給権があるということです。
| 支払日 | 対象となる月 |
|---|---|
| 2月15日 | 前年12月分・1月分 |
| 4月15日 | 2月分・3月分 |
| 6月15日 | 4月分・5月分 |
| 8月15日 | 6月分・7月分 |
| 10月15日 | 8月分・9月分 |
| 12月15日 | 10月分・11月分 |
この仕組みのため、いつ亡くなっても必ず未支給の年金が発生します。たとえば9月に亡くなった方であれば、8月分・9月分は10月15日に支払われる予定だった分で、まだ受け取っていません。これが未支給年金です。
受給停止――受給権者死亡届(報告書)
期限と提出先
年金を受けていた方が亡くなったときは、日本年金機構へ受給権者死亡届(報告書)を提出します。期限は制度により異なります。
| 項目 | 厚生年金保険 | 国民年金 |
|---|---|---|
| 届出の期限 | 死亡日から10日以内 | 死亡日から14日以内 |
| 提出先 | 年金事務所または街角の年金相談センター | 同左(国民年金のみの方は市区町村の窓口で扱う場合もあります) |
| 省略できる場合 | 日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている方は、原則として届出を省略できます | |
| 添えるもの | 亡くなった方の年金証書、死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、死亡診断書の写しなど) | |
マイナンバーによる省略が広く行われるようになったため、「何もしていないのに年金が止まった」という状況が生まれます。ただし、省略できるのはあくまで受給停止(止めるほう)だけです。次に説明する未支給年金の請求は、自動では行われません。
死亡後に振り込まれてしまった年金の扱い
手続きが間に合わず、亡くなった月より後の分まで振り込まれてしまうことがあります。この場合、受け取る権利のない分は返還が必要です。日本年金機構から返納の案内が届きますので、指示に従って手続きしてください。
なお、口座が凍結されていると入金も止まりますので、年金の振込先口座の状況も早めにご確認ください(死亡による口座凍結はいつから?)。
未支給年金を請求できる人
範囲と順位
未支給年金は、国民年金法第19条および厚生年金保険法第37条に定められた制度です。請求できるのは、亡くなった方と死亡当時に生計を同じくしていた次の親族で、順位が定められています。
| 順位 | 請求できる方 | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 配偶者 | 事実上婚姻関係と同様の事情にある方を含む取扱いです |
| 2 | 子 | 年齢の要件はありません |
| 3 | 父母 | - |
| 4 | 孫 | - |
| 5 | 祖父母 | - |
| 6 | 兄弟姉妹 | - |
| 7 | 上記以外の三親等内の親族 | 甥・姪、おじ・おば、配偶者の父母などが含まれます |
ここで注目していただきたいのが、この順位が民法の法定相続人の順位とは一致しないという点です。相続人でない方(たとえば生計を同じくしていた甥)が請求できることもあれば、相続人であっても生計を同じくしていなければ請求できないこともあります。法定相続人の考え方は相続人の範囲と調査をご覧ください。
「生計を同じくしていた」とは
同居していれば、通常は問題なく認められます。難しいのは別居していた場合です。単身赴任、施設への入所、進学のための転居などで住所が別になっていても、経済的な援助や定期的な音信・訪問があったと認められれば、生計同一と扱われることがあります。
この場合、生計同一関係に関する申立書の提出を求められ、第三者による証明を添えるよう案内されるのが一般的です。判断は個別の事情によりますので、迷われたときは年金事務所にご相談ください。
請求の手続き
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求先 | 年金事務所または街角の年金相談センター |
| 用紙 | 未支給年金・未支払給付金請求書。受給権者死亡届と一体の様式になっており、同時提出が可能 |
| 亡くなった方の書類 | 年金証書、死亡の事実がわかる書類(戸籍抄本、死亡診断書の写しなど) |
| 続柄の確認書類 | 請求者と亡くなった方の続柄がわかる戸籍謄本 |
| 生計同一の確認書類 | 住民票(同一世帯であることがわかるもの)。別世帯・別住所の場合は生計同一関係に関する申立書 |
| 受取口座 | 請求者本人名義の通帳等。故人名義の口座は使えません |
| 支給までの期間の目安 | 請求から数か月程度かかることがあります。あくまで目安です |
必要書類の詳細や様式は変更されることがあります。最新の情報は日本年金機構の公式サイト・年金事務所の窓口でご確認ください。戸籍謄本の集め方は戸籍謄本の収集方法にまとめています。
時効に注意
年金給付を受ける権利は、一般に5年で時効にかかるものとされています(国民年金法第102条第1項、厚生年金保険法第92条第1項)。未支給年金の請求も、この期間内に行う必要があります。
とはいえ、5年もあるからと後回しにすると、戸籍の収集や生計同一の証明が難しくなっていきます。受給権者死亡届と同時に請求するのが、手間の面でも確実さの面でも最良です。
未支給年金の税務上の扱い
ここが誤解の多いところです。未支給年金は亡くなった方の財産を承継するものではなく、遺族が自己の名で請求する固有の権利と解されています。条文にも「自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる」と定められています。
その結果、税務上の扱いは次のようになります。
| 給付の種類 | 相続財産か | 所得税の扱い |
|---|---|---|
| 未支給年金 | 相続財産ではない(遺族固有の権利) | 受け取った遺族の一時所得 |
| 遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 相続財産ではない | 原則として非課税 |
| 死亡退職金(勤務先から支給されるもの) | みなし相続財産となる場合がある | 相続税の対象。死亡退職金参照 |
一時所得は、収入金額からその収入を得るために支出した金額を差し引き、さらに特別控除として最大50万円を控除した残額の2分の1が課税の対象になります。未支給年金の額は数か月分にとどまることが多いため、ほかに一時所得がなければ、実際には課税されないケースが大半です。
ただし、生命保険の一時金など他の一時所得がある年は、合算して判定する必要があります。故人に事業所得や不動産所得があった場合の準確定申告(準確定申告)とあわせて、判断に迷われたら税理士にご確認ください。
遺族年金・死亡一時金は別の制度
未支給年金は「亡くなった方が受け取るはずだった分」であり、これから遺族が受け取る遺族年金とはまったく別の制度です。遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金には、それぞれ独自の要件があります。詳しくは遺族年金の仕組みと受給要件をご覧ください。
実務では、受給権者死亡届・未支給年金請求・遺族年金の裁定請求を、年金事務所で一度にご相談いただくのが効率的です。必要書類が重複するため、戸籍謄本などは多めに取得しておくと二度手間を避けられます。
まとめ
年金受給者が亡くなったときの手続きは、「止める」と「もらう」の二本立てです。止めるほうは、厚生年金保険で10日以内、国民年金で14日以内が原則ですが、マイナンバーが収録されていれば省略できます。一方、もらうほう――未支給年金の請求は、請求しない限り支払われません。
年金は後払いのため、いつ亡くなっても未支給が必ず発生します。請求できるのは生計を同じくしていた一定範囲の遺族で、順位は民法の相続順位とは異なります。未支給年金は相続財産ではなく遺族固有の権利であり、税務上は一時所得として扱われますが、50万円の特別控除があるため課税されないことが多いのが実情です。時効は一般に5年とされていますが、書類が揃ううちに、受給権者死亡届と同時に請求してしまうのが確実です。
▶ 年金は止まったけれど、未支給年金を請求できることをご存じでしたか?
請求できる遺族の範囲は民法の相続順位とは異なり、生計同一の証明が必要になることもあります。戸籍の収集から相続手続き全体の段取りまで、まとめてご支援します。
西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 何も届け出ていないのに年金が止まりました。手続きは不要ですか?
受給停止については不要な場合があります。日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている方は、受給権者死亡届(報告書)の提出を原則として省略できるためです。ただし、これは「止める」手続きだけの話です。亡くなった月までの未支給年金は、遺族が請求しない限り支払われませんので、別途ご請求ください。
Q. 未支給年金は相続財産として遺産分割の対象になりますか?
なりません。未支給年金は、遺族が自己の名で請求する固有の権利と解されており、亡くなった方の相続財産には含まれないと整理されています。そのため遺産分割協議の対象にもならず、法律上の順位に従って請求権のある遺族が受け取ります。相続税の課税対象にもなりませんが、受け取った方の一時所得として所得税の対象となります。
Q. 亡くなった父と同居していませんでした。未支給年金を請求できますか?
同居していなくても請求できる場合があります。要件は「生計を同じくしていた」ことであり、経済的な援助や定期的な音信・訪問があったと認められれば、別居していても該当しうるためです。この場合、生計同一関係に関する申立書の提出を求められ、第三者の証明を添えるよう案内されるのが一般的です。個別の判断になりますので、年金事務所にご相談ください。
Q. 未支給年金の請求に期限はありますか?
年金給付を受ける権利は、一般に5年で時効にかかるものとされています(国民年金法第102条第1項、厚生年金保険法第92条第1項)。未支給年金の請求もこの期間内に行う必要があります。ただし、時間が経つほど戸籍の収集や生計同一の証明が難しくなりますので、受給権者死亡届と同じタイミングで請求されることをおすすめします。