要 この記事の要点
- 自分で申請できるのは相続人が少なく、不動産が1〜2個、1回の相続で完結しているケースです
- 難しくなるのは数次相続・代襲相続・古い相続・私道の持分・未登記建物が絡む場合です
- 最も多いつまずきは登記簿上の住所と最後の住所の不一致と名寄帳で拾えない不動産の見落としです
- 2024年4月から相続登記は3年以内が義務(不動産登記法第76条の2)。間に合わない場合は相続人申告登記という手があります
相続登記の必要書類を調べ、「自分でもできそうだ」と思われた方は多いと思います。実際、単純なケースであれば自分で申請できます。必要書類の一覧は相続登記の必要書類一覧、費用の内訳は相続登記の費用にまとめています。
本記事で扱うのは、その先の問題です。どこまでなら自分でできて、どこから先は司法書士に頼むべきか。書類がそろっているのに通らない理由、そもそも拾い切れていない不動産。実務で頻発するつまずきを具体的にお示しします。
相続登記は自分でできる?
相続人が少なく不動産も一つか二つで一回の相続で完結している場合は、時間をかければ自分でも申請できます。
相続登記の申請自体に資格は不要です。所有者本人が申請することは認められています。司法書士でない者が他人の依頼を受けて業として登記申請を代理することは司法書士法第73条で禁じられていますが、ご自身の相続登記をご自身で申請することは自由です。
| 項目 | 自分で申請する場合 | 司法書士に依頼する場合 |
|---|---|---|
| 申請できるか | できます | できます |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4%(同じです) | 同じです |
| かかる時間 | 10〜30時間程度(調べる時間を含みます) | 書類の準備にご協力いただく程度 |
| 補正のリスク | 高めです。法務局からの連絡に都度対応します | 低くなります |
| 平日の時間 | 法務局への相談・提出で必要になります(郵送申請も可能です) | ほぼ不要です |
| 見落としのリスク | 拾えていない不動産がある場合、気づけません | 名寄帳等で確認します |
実際にご自身で完了される方もいらっしゃいます。ただし「できる」と「効率がよい」は別です。次章から、できるケースとできないケースを切り分けます。
自分でできるのはどんなケース?
被相続人の名義で登記されており、相続人が二、三名で、遺産分割も円満にまとまっている場合が該当します。
条件を具体的に示します。すべて満たすなら、ご自身での申請を検討していただいて構いません。
| 条件 | 確認方法 |
|---|---|
| 登記名義人が被相続人本人である | 登記事項証明書の権利部で確認します |
| 登記簿上の住所と住民票の除票の住所が一致している | 登記事項証明書と住民票の除票を見比べます |
| 対象の不動産が1〜2個で、所在が把握できている | 固定資産税の納税通知書と名寄帳で確認します |
| 相続人が2〜3名で全員と連絡が取れる | 戸籍で相続人を確定します |
| 1回の相続で完結している(相続の途中で別の相続人が亡くなっていない) | 相続人全員の戸籍を確認します |
| 遺産分割の内容が合意できている | 協議書にできる状態かどうか |
| 建物が登記されている | 登記事項証明書が取得できるかどうか |
| 農地や私道の持分が絡まない | 名寄帳と現地の状況で確認します |
この条件に当てはまる典型は「父が亡くなり、母と子2人が相続人、自宅の土地と建物のみ」というケースです。この場合は法務局の登記手続案内(完全予約制・1回20分以内)を利用しながらご自身で進めることが現実的です。西東京市・東久留米市・清瀬市の不動産は東京法務局田無出張所が管轄です。
難しくなるのはどんなケース?
数次相続や代襲相続、古い相続が未処理のまま残っている場合は、相続人の数と必要書類が一気に増えます。
ここから先は、ご自身での申請を強くおすすめしないケースです。
| ケース | 何が難しいか | 難易度 |
|---|---|---|
| 数次相続(相続手続き中に相続人が亡くなった) | 相続が2段階以上重なり、戸籍と相続人が倍増します。登記の仕方も複数の方法から選ぶことになります(数次相続とは) | 高い |
| 代襲相続(子が先に亡くなり孫が相続人) | 相続人の範囲の判断が必要です(代襲相続とは) | 中〜高 |
| 祖父名義のまま放置されている | 旧法下の相続が絡み、適用される法令の判断が必要になります | 非常に高い |
| 相続人が5名以上、または疎遠な方がいる | 戸籍の量が増え、協議の取りまとめも難航します | 高い |
| 不動産が複数の市区町村にある | 管轄の法務局が複数になり、申請も分かれます | 中〜高 |
| 私道・ため池・水路の持分がある | 固定資産税が非課税のため納税通知書に載らず、見落とします | 高い |
| 未登記の建物がある | 表題登記から必要になります。土地家屋調査士の関与が必要な場合もあります | 高い |
| 共有名義の持分の相続 | 持分の表示を正確に記載する必要があります(共有持分の相続) | 中〜高 |
| 相続人に判断能力が不十分な方がいる | 成年後見等の手続きが先に必要です | 高い |
| 抵当権が残っている | 抹消の手続きを併せて検討します | 中 |
とくに私道の持分漏れは見落としが多い項目です。私道は固定資産税が非課税であることが多く、納税通知書に記載されません。自宅の登記だけ済ませて数年後に売却しようとした段階で、前面道路の持分が故人名義のままだと判明する、という事例が実際にあります。
対策は名寄帳(固定資産課税台帳の写し)を必ず取得することです。非課税の物件も含めて一覧で出してもらえるよう、窓口で依頼してください。
どこでつまずくことが多い?
登記簿上の住所と最後の住所が一致せず、同一人物であることを証明できない場面が最も多いつまずきです。
書類がそろっているのに通らない理由を具体的に挙げます。
| つまずき | なぜ起きるか | 解決方法 |
|---|---|---|
| 登記簿上の住所と住民票の除票の住所が違う | 引っ越しをしても登記簿の住所は自動で変わりません | 住所の変遷をたどる書類(戸籍の附票、住民票の除票の履歴など)で同一人物であることを示します。つながらない場合は不在籍証明・不在住証明などで対応します |
| 戸籍に抜けがある | 改製原戸籍や除籍を取り漏らしています | 出生から死亡まで連続しているかを1通ずつ確認します |
| 遺産分割協議書の不動産の表示が登記事項証明書と一致しない | 地番・家屋番号・床面積などを納税通知書から転記してしまうことがあります | 必ず登記事項証明書の記載どおりに書きます。相続人全員の押印をやり直すことになります |
| 登録免許税の計算違い | 評価額の端数処理や持分計算を誤ります | 固定資産評価証明書の価格を基準に、法務局で確認しながら計算します |
| 収入印紙の額が足りない | 計算違いの結果です | 補正で追加します |
| 添付書類の原本還付の申出をしていない | 他の手続きに使う戸籍が戻ってきません | 申請時に原本還付を申し出て、コピーに原本と相違ない旨を記載します |
| 相続関係説明図の記載不足 | 様式の要件を満たしていません | 法務局の様式例を確認します |
| 押印・署名の不備 | 認印を使う、押印がかすれているなど | 実印を使い、印鑑登録証明書と照合できる状態にします |
この表のうち最も厄介なのは1つ目です。登記簿上の住所が古い住所のままで、そこから最後の住所までの変遷がつながらない場合、追加の証明書を集めることになります。古い住民票の除票は保存期間の問題で取得できないこともあり、ここで行き詰まる方が多くいらっしゃいます。
協議書の不動産の表示の不一致も頻発します。詳しくは遺産分割協議書のよくある失敗5つをご覧ください。
自分でやると何にどれだけ時間がかかる?
調べる時間と書類の収集、申請書の作成を合わせて十時間から三十時間程度、補正が入るとさらに延びます。
工程ごとの目安をお示しします。
| 工程 | 時間の目安 | 平日の時間が必要か |
|---|---|---|
| 必要書類と手続きを調べる | 3〜10時間 | 不要 |
| 登記事項証明書の取得 | 1時間 | オンライン請求なら不要 |
| 名寄帳・固定資産評価証明書の取得 | 1〜2時間 | 郵送請求なら不要 |
| 戸籍の収集 | 3〜10時間(待ち時間を除く) | 定額小為替の購入で必要 |
| 相続関係説明図の作成 | 1〜3時間 | 不要 |
| 遺産分割協議書の作成と押印の取りまとめ | 3〜10時間 | 不要 |
| 登記申請書の作成と登録免許税の計算 | 2〜5時間 | 不要 |
| 法務局の登記手続案内(完全予約制) | 1回20分以内×1〜2回 | 必要 |
| 申請と補正の対応 | 2〜10時間 | 必要になることがあります |
合計で10時間から30時間程度、補正が重なると40時間を超えることもあります。登記完了までの期間は申請から1週間から2週間程度が目安ですが、書類の収集を含めると全体で1か月から3か月を見ておくのが現実的です。
法務局の登記手続案内は無料で利用できますが、完全予約制で1回20分以内と時間が限られており、どう分けるべきかという相談や申請の代行は受け付けられません。書き方の案内までが範囲です。
司法書士に頼むといくらかかる?
登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で誰が申請しても同額であり、これに司法書士報酬が加わる形になります。
費用の構造を整理します。
| 費用 | 金額 | 依頼しても変わるか |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4%(登録免許税法) | 変わりません |
| 登記事項証明書 | 書面請求600円程度/通 | 変わりません |
| 固定資産評価証明書 | 300〜400円程度/通 | 変わりません |
| 戸籍・除籍・改製原戸籍 | 450円/750円程度/通 | 変わりません |
| 司法書士報酬 | 事務所により異なります | 依頼した場合のみ |
たとえば固定資産税評価額が2,000万円の不動産であれば、登録免許税は8万円です。これは誰が申請しても同じです。司法書士報酬の一般的な相場については相続登記の費用でご確認ください。
当センターにご依頼いただく場合、登記申請は提携する司法書士が担当します。当センターは株式会社で司法書士ではありませんので、登記申請の代理は行いません(司法書士法第73条第1項)。当センターの遺産整理業務は遺産総額の0.6%で最低600,000円(税別)が目安で、登記手数料と司法書士報酬は別途必要です。
義務化の期限はどうなっている?
相続登記は二〇二四年四月から義務化され、不動産登記法第七十六条の二により三年以内の申請が必要とされています。
期限と罰則を正確に整理します。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申請期限 | 相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内 | 不動産登記法第76条の2 |
| 遺産分割で取得した場合 | 原則は、相続により取得したことを知った日から3年以内です。その後に遺産分割が成立した場合は、分割の日から3年以内に、分割内容による登記も必要です | 同条 |
| 過去の相続 | 2024年4月1日より前に開始した相続も対象で、2027年3月31日まで(不動産の取得を知ったのが2024年4月1日以後なら、その日から3年以内)に申請が必要です | 改正法の経過措置 |
| 怠った場合 | 正当な理由なく申請を怠ったときは10万円以下の過料の対象 | 不動産登記法第164条第1項 |
| 分割がまとまらない場合の救済 | 相続人申告登記を行えば申請義務を履行したものとして扱われます | 不動産登記法第76条の3 |
| 住所変更登記 | 2026年4月1日から所有者の住所等の変更登記も義務化されています。住所等の変更日から2年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です。施行日前の変更分は2028年3月31日までに申請が必要です | 不動産登記法第76条の5、第164条第2項 |
相続人申告登記は便宜的な手当てです。これを行っても所有権の移転登記にはなりませんので、売却や担保設定はできません。後に正式な相続登記が必要です。義務化の詳細は不動産の相続登記が義務化をご覧ください。
期限が近く、かつ数次相続などで複雑な場合は、ご自身で進めて間に合わなくなるリスクを考慮に入れてください。
結局どう判断すればよい?
相続が一回で完結し不動産も把握できているなら自分で、数次相続や住所の不一致があるなら依頼が現実的です。
判断基準をまとめます。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 父の死亡による相続、相続人は母と子2人、自宅のみ、住所も一致 | ご自身で申請できます |
| 相続人が4名以上、または遠方に分かれている | 協議の取りまとめが主な負担です。登記は依頼を検討してください |
| 登記簿上の住所が最後の住所と違う | 依頼をおすすめします。追加の証明書の判断が難しい部分です |
| 数次相続、代襲相続、祖父名義のまま放置 | 依頼してください。ご自身での完了は現実的でありません |
| 名寄帳を見たら知らない不動産があった | まず全体を確認してください。私道や山林が含まれることがあります |
| 未登記の建物がある | 依頼してください。土地家屋調査士の関与が必要な場合があります |
| 相続税の申告も必要 | 分け方が税に影響します。まとめて相談されるほうが安全です |
| 3年の期限が迫っている | 依頼をおすすめします。間に合わない場合は相続人申告登記を検討します |
迷ったときの実務的な助言としては、まず名寄帳と登記事項証明書を取得して、対象の不動産をすべて把握することです。ここで予想外の物件が出てこなければ、ご自身で進める見込みが立ちます。
当センターは西東京市ひばりが丘北を拠点に、東久留米市・清瀬市・新座市のお客様に対応しています。戸籍の収集、名寄帳の取得、財産の確定、遺産分割協議書の整理までを引き受け、登記申請は提携する司法書士へ引き継ぎます。初回相談では、ご自身で進められそうかどうかを正直にお伝えします。
まとめ:結局どうすればよい?
相続登記は、ご自身でも申請できます。司法書士でない者が他人の依頼を受けて業として登記申請を代理することは司法書士法第73条で禁じられていますが、ご自身の相続登記をご自身で申請することは自由です。
ご自身で進められるのは、登記名義人が被相続人本人で、登記簿上の住所と住民票の除票の住所が一致し、不動産が1〜2個、相続人が2〜3名、1回の相続で完結しているケースです。この条件に当てはまるなら、法務局の登記手続案内を利用しながら進めていただいて構いません。
一方で、数次相続、代襲相続、祖父名義のままの放置、私道やため池の持分、未登記の建物、そして登記簿上の住所と最後の住所の不一致が絡む場合は、ご自身での完了は現実的ではありません。特に住所の変遷がつながらない場合は、追加の証明書をどう組むかという判断が必要になります。
そして見落としの問題があります。私道は固定資産税が非課税であることが多く、納税通知書に載りません。まず名寄帳を取得して対象の不動産をすべて把握することが、判断の出発点です。
相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内の申請が必要です。期限が近い場合や複雑な場合は、お早めにご相談ください。初回相談は無料です。平日9:00〜18:00、042-439-6523へお電話ください。
▶ 名寄帳を取ったら、知らない不動産が出てきていませんか?
戸籍の収集、名寄帳と評価証明書の取得、不動産の洗い出し、遺産分割協議書の整理までを当センターが引き受け、登記申請は提携する司法書士が担当します。ご自身で進められそうな場合は、その旨をお伝えします。
西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 相続登記は自分でやってもいいのですか?
できます。司法書士でない者が他人の依頼を受けて業として登記申請を代理することは司法書士法第73条で禁じられていますが、ご自身の相続登記をご自身で申請することは自由です。登録免許税も固定資産税評価額の0.4%で、誰が申請しても同額です。ただし自分でできるのは、登記名義人が被相続人本人で登記簿上の住所と住民票の除票の住所が一致しており、不動産が1〜2個、相続人が2〜3名、1回の相続で完結しているケースに限ると考えたほうが安全です。
Q. 登記簿の住所が古い住所のままですが、どうすればいいですか?
登記簿上の住所と住民票の除票の住所が一致しない場合、同一人物であることを証明する必要があります。戸籍の附票や住民票の除票の履歴で住所の変遷をたどるのが基本ですが、古い書類は保存期間の問題で取得できないことがあります。その場合は不在籍証明や不在住証明などを組み合わせて対応します。この判断は実務経験が必要な部分で、自分で進める方が最もつまずくところです。司法書士へのご依頼をおすすめします。
Q. 私道の持分も登記しないといけないのですか?
名義が故人のままであれば登記が必要です。問題は、私道は固定資産税が非課税であることが多く、納税通知書に記載されないため見落としやすい点です。自宅の登記だけ済ませて数年後に売却しようとした段階で、前面道路の持分が故人名義のままだと判明する事例が実際にあります。対策は、不動産所在地の市区町村で名寄帳を取得し、非課税の物件も含めて一覧で確認することです。ため池や水路の持分も同様です。
Q. 3年以内に登記できそうにありません。どうなりますか?
正当な理由なく申請を怠った場合、不動産登記法第164条第1項により10万円以下の過料の対象となります。遺産分割がまとまらず期限に間に合わない場合は、不動産登記法第76条の3の相続人申告登記という制度があり、これを行えば申請義務を履行したものとして扱われます。ただし所有権の移転登記ではないため、売却や担保設定はできず、後に正式な相続登記が必要です。西東京市・東久留米市・清瀬市の不動産は東京法務局田無出張所が管轄です。