要 この記事の要点
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続税法第15条)。これを超えると申告が必要です
- 集計に含めるのはプラスの財産+みなし相続財産-非課税-債務・葬式費用+一定期間内の生前贈与です
- 特例を使う前の額が基礎控除を超えていれば、特例を使って税額がゼロになっても申告が必要です。特例を使う前の額が基礎控除以下なら、原則として申告は不要です
- 判定を誤りやすいのは名義預金・生命保険・小規模宅地等の特例の適用前の金額の3つです
「相続税の申告は必要なのだろうか」。相続が起きて最初に気になる点だと思います。基礎控除の計算式そのものは相続税の基礎控除とは、遺産額ごとの税額の目安は相続税の早見表にまとめています。
本記事では、実際に手元の資料から判定する手順をご案内します。見落としやすい項目、そして「特例を使えば基礎控除以下になるのに申告が必要」という落とし穴まで含めて、順を追って整理します。
相続税の申告は必ず必要?
特例を使う前の額が基礎控除を超えていれば、特例で税額がゼロになっても申告が必要で、基礎控除以下なら原則不要です。
判定は2段構えです。
| 状況 | 申告の必要性 |
|---|---|
| 財産の合計が基礎控除以下で、特例を使わない | 申告は不要です |
| 財産の合計が基礎控除を超える | 申告が必要です(相続税法第27条第1項) |
| 配偶者の税額軽減を使って税額がゼロになる | 申告が必要です。申告しなければ適用を受けられません |
| 小規模宅地等の特例を使って基礎控除以下になる | 申告が必要です。特例の適用には申告が要件です |
| 相続時精算課税を使った贈与がある | 申告が必要になる場合があります |
| 納税額がゼロでも還付を受けたい | 申告が必要です |
ここで最も誤解が多いのが「特例を使って税額がゼロになるなら申告も不要だろう」という思い込みです。配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)も小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)も、申告することが適用の要件とされています。申告しなければ特例は使えず、本来の税額が課されることになります。
したがって判定の順序は「特例適用前の金額が基礎控除を超えるか」です。ここを間違えないでください。
基礎控除はいくら?
基礎控除は三千万円に六百万円と法定相続人の数を掛けた額を加えた金額で、相続税法第十五条に定められています。
法定相続人の数ごとの金額を示します。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
| 6人 | 6,600万円 |
法定相続人の数え方には決まりがあります。
| 論点 | 取扱い |
|---|---|
| 相続放棄をした人がいる | 相続税法第15条第2項により、放棄がなかったものとして数えます |
| 養子がいる | 実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までを法定相続人の数に含めます |
| 代襲相続人がいる | 代襲相続人の数で数えます(代襲相続とは) |
| 相続欠格・廃除がある | その人は法定相続人の数に含めません |
| 胎児がいる | 出生前と出生後で取扱いが異なります。税理士にご確認ください |
法定相続人を確定するには戸籍が必要です。見落とされた相続人が後から判明すると基礎控除額が変わりますので、まず戸籍で確定してください(相続人調査の方法)。
財産はどう集計する?
プラスの財産とみなし相続財産を足し、非課税分と債務と葬式費用を引き、一定期間内の生前贈与を加えて集計します。
集計の構造を示します。
| 区分 | 含めるもの | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| プラスの財産 | 預貯金、現金、有価証券、土地、建物、貸付金、自動車、貴金属、骨董、仮想通貨など | 相続開始時の時価で評価します |
| みなし相続財産 | 死亡保険金、死亡退職金など | 相続税法第3条 |
| 非課税となるもの(差し引く) | 墓所・霊びょう・祭具、生命保険金の非課税枠、死亡退職金の非課税枠 | 相続税法第12条 |
| 生命保険金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | 相続税法第12条(生命保険は相続税の節税になる?) |
| 死亡退職金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | 相続税法第12条(死亡退職金と相続税) |
| 債務(差し引く) | 借入金、未払いの医療費、未払いの税金など | 相続税法第13条 |
| 葬式費用(差し引く) | 通夜・本葬の費用、お布施、火葬費用など | 香典返しや法要の費用は対象外です(葬儀費用と相続税) |
| 生前贈与の加算 | 相続開始前一定期間内に贈与を受けた財産 | 相続税法第19条。2024年1月1日以後の贈与から加算期間が7年に延長されました(経過措置あり。表の下で説明します)。相続や遺贈で財産を取得した人が受けた贈与に限られます |
| 相続時精算課税による贈与 | 制度を使って贈与された財産 | 相続財産に加算されます(2024年1月1日以後の贈与は、年110万円の基礎控除を差し引いた後の額) |
生前贈与の加算は、2024年1月1日以後の贈与から加算期間が7年に延長されましたが、経過措置があります。2026年12月31日までに開始する相続は3年、2027年1月1日〜2030年12月31日の相続は2024年1月1日以後の贈与が対象、2031年1月1日以後の相続で7年になります。延長された4年分の贈与からは総額100万円が控除されます。加算されるのは相続や遺贈で財産を取得した人が受けた贈与に限られます。個別の当てはめは税理士にご確認ください。
不動産の評価は、土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を用いるのが基本です。詳しくは不動産がある相続の進め方で整理しています。
基礎控除以下なら申告しなくてよい?
特例を適用した結果として基礎控除以下になる場合は申告が必要であり、申告しなければ特例を使えません。
もう一度強調します。ここが最大の落とし穴です。
| ケース | 申告 | 理由 |
|---|---|---|
| 特例を使わずに基礎控除以下 | 不要です | 課税されないためです |
| 小規模宅地等の特例を適用して基礎控除以下になる | 必要です | 租税特別措置法第69条の4の適用には申告が要件です |
| 配偶者の税額軽減で税額がゼロになる | 必要です | 相続税法第19条の2の適用には申告が要件です |
| 農地等の納税猶予や事業承継税制を使う | 必要です | いずれも申告が要件です |
| 申告期限までに分割が終わらないが特例を使いたい | 必要です | 未分割で申告し、所定の書類を添付したうえで、分割確定後に手続きを取ります |
具体例で考えます。相続人が配偶者と子1人で基礎控除は4,200万円。財産は自宅の土地(路線価による評価が3,000万円)と預金2,000万円で合計5,000万円。このままでは基礎控除を超えます。
ここで小規模宅地等の特例を使うと、特定居住用宅地等として330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。3,000万円の土地が600万円になれば合計2,600万円で基礎控除以下です。しかしこの場合も申告が必要です。申告しなければ特例は使えず、5,000万円で計算されます。詳しくは小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減をご覧ください。
判定の手順はどうなる?
相続人を確定し、財産を洗い出して評価し、債務を引き、特例適用前の金額と基礎控除を比べる順序で進めます。
手元の資料から判定する手順を示します。
| 手順 | やること | 必要な資料 |
|---|---|---|
| 1 | 戸籍で法定相続人を確定し、基礎控除額を計算する | 被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍 |
| 2 | プラスの財産を洗い出す | 通帳、残高証明書、固定資産税の納税通知書、名寄帳、証券会社の報告書、届いた郵便物 |
| 3 | 不動産を評価する | 路線価図(国税庁の公式サイト)、固定資産評価証明書 |
| 4 | みなし相続財産を確認する | 生命保険の支払通知、勤務先からの死亡退職金の通知 |
| 5 | 非課税枠を差し引く | 法定相続人の数に基づき計算します |
| 6 | 債務と葬式費用を差し引く | 借入の残高証明、未払いの請求書、葬儀社の領収書 |
| 7 | 一定期間内の生前贈与を加算する | 贈与の記録、贈与税の申告書 |
| 8 | 特例適用前の合計額と基礎控除を比べる | ― |
手順8がポイントです。比べるのは特例を使う前の金額です。ここで基礎控除を超えていれば、特例で税額がゼロになる場合でも申告が必要になります。
財産の洗い出しの詳しい方法は相続財産調査の方法をご覧ください。
判定を間違えやすいのはどこ?
名義預金と生命保険の扱い、そして不動産の評価方法の三つで判定を誤るケースが多く見られます。
実務でよくある誤りを挙げます。
| 誤りやすい点 | 正しい取扱い |
|---|---|
| 配偶者や子の名義の預金は関係ないと考える | 実質的に被相続人の財産であれば名義預金として相続財産に含まれます(名義預金とは) |
| 生命保険金は受取人の財産だから無関係と考える | 受取人固有の財産ですが、相続税法第3条によりみなし相続財産として課税対象です。500万円×法定相続人の数の非課税枠があります |
| 不動産は固定資産税評価額で計算する | 土地は路線価方式または倍率方式で評価します。固定資産税評価額とは異なります。建物は固定資産税評価額を用います |
| 小規模宅地等の特例を適用した後の金額で判定する | 特例適用前の金額で基礎控除と比べます |
| 相続放棄した人を法定相続人の数から除く | 相続税法第15条第2項により、放棄がなかったものとして数えます |
| 生前贈与は関係ないと考える | 相続開始前一定期間内の贈与は加算されます。相続時精算課税を使った贈与も加算されます(2024年1月1日以後の贈与は、年110万円の基礎控除を差し引いた後の額) |
| 死亡退職金を忘れる | みなし相続財産です。500万円×法定相続人の数の非課税枠があります |
| ネット銀行・ネット証券の口座を見落とす | 郵便物やメールの履歴から探します(デジタル遺産の相続) |
とくに土地の評価方法の誤りは判定を大きく狂わせます。一般に路線価による評価額は固定資産税評価額より高くなる傾向があります。固定資産税評価額で計算して「基礎控除以下だから大丈夫」と判断してしまうと、実際には超えていたという事態が起こります。
申告が必要な場合は何をいつまでに?
相続の開始があったことを知った日の翌日から十か月以内に、被相続人の最後の住所地の税務署へ申告し納付します。
期限と窓口を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告期限 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(相続税法第27条第1項) |
| 納付期限 | 申告期限と同じです |
| 申告先 | 被相続人の最後の住所地を管轄する税務署。西東京市・東久留米市・清瀬市は東村山税務署です(新座市など埼玉県内は埼玉県内の税務署) |
| 申告する人 | 相続または遺贈により財産を取得した人。共同で1通の申告書を提出することもできます |
| 納付方法 | 金融機関や税務署の窓口、電子納税など。一度に払えない場合は延納や物納の制度があります |
| 分割が間に合わない場合 | 未分割で申告し、所定の書類を添付したうえで、分割確定後に手続きを取ります |
法定の期限は10か月です。ただし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を当初申告で使うには、申告期限までに分割が終わっている必要があるため、余裕をもって8か月目までに分け方を決める段取りをおすすめします。戸籍の収集に1〜2か月、協議に1〜2か月かかることを見込むと、早い着手が必要です。期限の全体像は相続手続きはいつまでに何をする?をご覧ください。
判定や申告は誰に頼めばよい?
判定の見通しは自分でも立てられますが、評価と特例の適用を伴う申告は税理士に依頼する必要があります。
誰が何をできるかを整理します。
| 作業 | 担当 |
|---|---|
| 法定相続人の確定と戸籍の収集 | ご自身でも可能。当センターが代行できます |
| 財産の洗い出しと残高証明書の請求 | ご自身でも可能。当センターが代行できます |
| 基礎控除との概算の比較 | ご自身でも可能。当センターでは基礎控除の計算式など一般的なご説明にとどめ、個別の判定は税理士法人みらいの税理士が行います |
| 不動産の相続税評価 | 税理士が行います。概算の目安は路線価図からご自身でも試算できます |
| 申告書の作成と提出、税務代理 | 税理士のみ(税理士法第2条。同法第52条が税理士でない者の税理士業務を禁じています) |
| 個別の税額計算を伴う税務相談 | 税理士のみ |
| 登記申請 | 司法書士(司法書士法第3条) |
当センターは株式会社ですので、申告書の作成と税務代理は行いません。相続税の申告は税理士法人みらいの税理士が担当します。当センターは戸籍の収集、財産の洗い出し、残高証明書の請求といった前段の作業を引き受けます。申告が必要かどうかの判断と申告は、税理士法人みらいの税理士が行います。
無料の相談先としては税務署の電話相談や予約制の面接相談もあります(一般的な取扱いの説明までが範囲です)。相談先の選び方は西東京市で相続を相談するにはをご覧ください。
当センターの遺産整理業務は遺産総額の0.6%で最低600,000円(税別)が目安で、相続税申告料は別途必要です。初回相談は無料です。
まとめ:結局どうすればよい?
相続税の申告が必要かどうかは、特例を使う前の財産の合計額が基礎控除を超えるかで判定します。基礎控除は相続税法第15条により3,000万円に600万円と法定相続人の数を掛けた額を加えた金額です。
集計に含めるのは、プラスの財産とみなし相続財産を足し、非課税枠と債務と葬式費用を引き、相続開始前一定期間内の生前贈与を加えた額です。2024年1月1日以後の贈与から加算期間が7年に延長されましたが、経過措置があります。2026年12月31日までに開始する相続は3年、2027年1月1日〜2030年12月31日の相続は2024年1月1日以後の贈与が対象、2031年1月1日以後の相続で7年になります。延長された4年分の贈与からは総額100万円が控除されます。加算されるのは相続や遺贈で財産を取得した人が受けた贈与に限られます。該当する場合は税理士にご確認ください。
最大の落とし穴は、特例を使って税額がゼロになる場合も申告が必要という点です。配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、申告することが適用の要件です。申告しなければ特例は使えません。
判定を誤りやすいのは、名義預金、生命保険金、そして土地の評価方法の3つです。とくに土地を固定資産税評価額で計算して「基礎控除以下」と判断するのは危険です。路線価による評価額はこれより高くなる傾向があります。
申告が必要な場合の法定の期限は10か月です。特例を当初申告で使うには分割を終えておく必要があるため、余裕をもって8か月目までに分け方を決める段取りをおすすめします。申告が必要かどうか分からない段階でもご相談ください。申告要否の判断は税理士法人みらいの税理士が行います。初回相談は無料です。平日9:00〜18:00、042-439-6523へお電話ください。
▶ 申告が必要かどうか分からないまま、10か月が近づいていませんか?
戸籍による法定相続人の確定、財産の洗い出し、残高証明書の請求までを当センターが引き受けます。申告が必要と判断された場合は、税理士法人みらいの税理士が申告を担当します。
西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 相続税の申告が必要かどうか、どうやって調べればいいですか?
まず戸籍で法定相続人を確定し、基礎控除額を計算します。相続税法第15条により3,000万円に600万円と法定相続人の数を掛けた額を加えた金額です。次に預貯金、不動産、有価証券、生命保険金、死亡退職金などを集計し、非課税枠と債務と葬式費用を引き、相続開始前一定期間内の生前贈与を加えます。この合計が基礎控除を超えれば申告が必要です。重要なのは、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用する前の金額で比べることです。
Q. 相続税がかからなければ申告しなくていいのですか?
特例を使わずに基礎控除以下であれば申告は不要です。しかし配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用した結果として税額がゼロになる、あるいは基礎控除以下になるという場合は申告が必要です。相続税法第19条の2の配偶者の税額軽減も租税特別措置法第69条の4の小規模宅地等の特例も、申告することが適用の要件とされているためです。申告しなければ特例は使えず、本来の税額が課されることになります。
Q. 土地は固定資産税の評価額で計算すればいいですか?
いいえ、相続税の計算では土地は路線価方式または倍率方式で評価します。路線価は国税庁の公式サイトで公開されており、路線価に地積を掛けて各種の補正を行う方法です。一般に路線価による評価額は固定資産税評価額より高くなる傾向があり、固定資産税評価額で計算して基礎控除以下と判断すると、実際には超えていたという事態が起こります。なお建物は固定資産税評価額を用います。登録免許税の計算に使うのは固定資産税評価額で、こちらとも混同しないようご注意ください。
Q. 生命保険金も相続税の対象になるのですか?
対象になります。生命保険金は受取人固有の財産ですが、相続税法第3条によりみなし相続財産として相続税の課税対象とされています。ただし相続税法第12条により、500万円に法定相続人の数を掛けた額までは非課税です。たとえば法定相続人が3人であれば1,500万円までは非課税となります。死亡退職金にも同じ非課税枠があります。遺産分割の対象にはなりませんが、申告の集計には含めますのでご注意ください。