要 この記事の要点
- 不動産がある相続は洗い出し→評価→分け方の決定→名義変更の順序を守ることが重要です
- 評価額は固定資産税評価額・相続税評価額・時価の3つがあり、使う場面が違います
- 分け方は現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つ。共有は将来の負担が大きくなりがちです
- 相続登記は3年以内が義務(不動産登記法第76条の2)。分け方を決める前に税の特例の確認が必要です
相続財産に不動産が含まれると、預貯金だけの相続とは質が変わります。評価額が1つに決まらず、分け方の選択肢が複雑で、名義変更に期限があるからです。
本記事では、不動産がある相続を順序立てて整理します。順序を間違えると、せっかく決めた分け方で税の特例が使えなかった、協議書が法務局で受理されなかった、という事態が起こります。何を、どの順番で確認するかに焦点を当てます。
不動産がある相続は何が違う?
評価額が一つに定まらず分けにくいうえ、名義変更に三年の期限があるという三点が預貯金との違いです。
違いを具体的に整理します。
| 論点 | 預貯金のみの相続 | 不動産がある相続 |
|---|---|---|
| 財産の把握 | 通帳と残高証明書で確定します | 名寄帳と登記事項証明書で確認します。私道などの見落としが起こります |
| 評価 | 残高がそのまま金額です | 固定資産税評価額・相続税評価額・時価の3つがあり、場面ごとに使い分けます |
| 分けやすさ | 金額で分割できます | 物理的に分けにくく、代償金や売却を伴うことがあります |
| 名義変更 | 払戻しで完了します | 相続登記が必要で、3年以内の申請義務があります |
| 税の特例 | 関係しにくい | 小規模宅地等の特例が使えるかどうかで税額が大きく変わります |
| 手続きの担当 | 当センターが代行できます | 登記申請は司法書士、評価と申告は税理士が担当します |
| 期間 | 1〜3か月程度 | 3か月〜1年程度 |
とくに評価額が3つあるという点が混乱の元です。後述しますが、どの場面でどれを使うかを押さえれば整理できます。
不動産はどう洗い出す?
固定資産税の納税通知書だけでは足りないため、市区町村で名寄帳を取得して非課税の物件まで確認します。
最初の工程であり、最も見落としが起こる工程です。
| 資料 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書 | 課税対象の不動産の一覧と固定資産税評価額 | 非課税の物件(私道、ため池、水路など)は記載されません |
| 名寄帳(固定資産課税台帳の写し) | その市区町村内にある被相続人名義の不動産の一覧 | 非課税の物件も含めて出してもらえるよう窓口で依頼してください |
| 登記事項証明書 | 正確な所在・地番・地目・地積、権利関係、抵当権の有無 | 全国どの法務局でも取得でき、オンライン請求も可能です |
| 権利証・登記識別情報通知 | 過去の取得の経緯 | 紛失していても手続きは可能です |
| 公図・地積測量図 | 隣地との位置関係 | 境界の確認に使います |
| 賃貸契約書 | 貸地・貸家の有無と収益 | 貸付事業用宅地等の検討に関係します |
名寄帳は必ず取得してください。私道の持分は固定資産税が非課税であることが多く、納税通知書に載りません。自宅の登記だけ済ませ、数年後の売却時に前面道路の持分が故人名義のままだと判明する事例が実際にあります。
また複数の市区町村に不動産がある場合、名寄帳は市区町村ごとに請求する必要があります。西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市にまたがっている場合は、4か所に請求することになります。
財産全体の洗い出し方は相続財産調査の方法をご覧ください。
評価はどの方法で行う?
登記の税金には固定資産税評価額、相続税の計算には路線価による評価額、分割や売却には時価を使い分けます。
3つの評価額の使い分けを整理します。これを混同すると判断を誤ります。
| 評価額 | どう決まるか | 使う場面 | 水準の傾向 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税評価額 | 市区町村が決定し、固定資産評価証明書や納税通知書で確認できます | 相続登記の登録免許税の計算(評価額×0.4%)、建物の相続税評価 | 時価より低めの水準 |
| 相続税評価額(土地) | 路線価方式または倍率方式。路線価は国税庁の公式サイトで公開されています | 相続税の申告 | 固定資産税評価額より高めになる傾向 |
| 時価(実勢価格) | 市場で売買される価格。不動産会社の査定などで把握します | 遺産分割の際の価値の基準、売却 | 最も高くなることが多い |
注意点を具体的に挙げます。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 登記の費用と相続税は別の評価額を使う | 登録免許税は固定資産税評価額の0.4%、相続税は路線価による評価額が基準です |
| 遺産分割で使う価値は時価が基本 | 相続人の間で公平に分けるには、実際に売れる金額で考えるのが合理的です |
| 評価の時点 | 相続税は相続開始時の時価で評価します。遺産分割は分割時の価値を基準とするのが一般的です |
| 建物の評価 | 相続税でも登録免許税でも固定資産税評価額を用います |
| 相続による取得は不動産取得税がかからない | 相続による取得は不動産取得税の課税対象外とされています(地方税法) |
路線価は国税庁の公式サイトで公開されている路線価図・評価倍率表で確認できます。ただし補正の適用には判断を要しますので、申告を伴う場合は税理士にご相談ください。
分け方にはどんな選択肢がある?
現物分割と代償分割と換価分割と共有の四つがあり、誰が住み続けるかと納税資金の有無で選択が変わります。
4つの方法を比較します。
| 方法 | 内容 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産はA、預金はBというように物件ごとに分けます | 財産の種類が複数あり、価値が近い場合 | 価値に差があると不公平になります |
| 代償分割 | 不動産を取得した人が、他の相続人に代償金を支払います | 自宅に住み続ける相続人がいる場合 | 代償金を払う資金が必要です |
| 換価分割 | 不動産を売却し、代金を分けます | 誰も住まない、全員が現金化を希望する場合 | 売却に時間がかかり、譲渡所得税が課される場合があります |
| 共有 | 複数の相続人の共有名義にします | 結論を先送りする場合 | 将来の管理・売却・次の相続で負担が重くなります |
選び方の実務的な順序は、まず住み続ける人がいるかを確認し、いればその人が取得する前提で代償金を検討するという流れです。誰も住まないのであれば換価分割が最もすっきりします。
実家を兄弟で相続する場合の具体的な進め方は実家を兄弟で相続したら、売る・貸す・住むの判断材料は相続した実家はどうする?をご覧ください。
共有にするとどうなる?
共有は結論を先送りできる反面、売却や管理に共有者の同意が必要となり次の相続で権利者がさらに増えます。
共有は手続き上は簡単ですが、将来の負担が最も大きい選択です。
| 場面 | 共有の場合に起こること | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 売却したいとき | 共有者全員の同意が必要です | 全員の意思がそろわないと売れません |
| 賃貸したいとき | 一定の行為には持分の過半数の同意が必要です | 民法の共有に関する規定によります |
| 修繕したいとき | 費用の負担をめぐって揉めやすくなります | ― |
| 共有者が亡くなったとき | その持分がさらに相続され、権利者が増えます | 数次相続(数次相続とは) |
| 共有者と連絡が取れなくなったとき | 手続きが止まります | 所在不明共有者に関する制度の利用を検討します |
| 共有を解消したいとき | 共有物分割の協議、まとまらなければ裁判所の手続きになります | ― |
当センターでは、「とりあえず共有」という結論はできる限りお避けいただくようお伝えしています。相続人がご兄弟であれば連絡も取れますが、その次の世代になると面識のない従兄弟同士の共有になります。そこから売却の同意を取るのは容易ではありません。
共有のリスクと解消方法は共有不動産の相続、持分の協議書の書き方は共有持分の相続で詳しく解説しています。
名義変更はどの順序で行う?
財産を確定して評価し、税の特例を確認したうえで分け方を決め、協議書を作ってから登記を申請します。
順序を示します。この順序を守ることが本記事の主旨です。
| 順序 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 戸籍で相続人を確定する | 1〜2か月 |
| 2 | 名寄帳と登記事項証明書で不動産をすべて洗い出す | 2〜3週間 |
| 3 | 評価する。相続税の申告が必要かを判定する | 2〜4週間 |
| 4 | 税の特例が使える分け方かを確認する(小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減) | 税理士と相談 |
| 5 | 分け方を決める | 1〜2か月 |
| 6 | 遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印を押印する | 2週間〜1か月 |
| 7 | 相続登記を申請する(司法書士) | 申請から1〜2週間で完了 |
| 8 | 相続税の申告が必要な場合は申告する(税理士) | 10か月の期限内に |
順序4を飛ばすと取り返しがつかないことがあります。小規模宅地等の特例は誰がその土地を取得するかによって適用の可否が変わります。分け方を決めてから税理士に相談し、「その分け方では特例が使えない」と判明する事例が実際にあります。
また順序6で注意すべきは、協議書の不動産の表示を登記事項証明書の記載どおりに書くことです。納税通知書から転記すると表示が一致せず、法務局で受理されず作り直しになることがあります。その場合は相続人全員の実印を集め直すことになります(遺産分割協議書のよくある失敗5つ)。
相続登記は不動産登記法第76条の2により、相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務です。正当な理由なく怠った場合は同法第164条第1項により10万円以下の過料の対象となります。
税の特例はどう関わる?
小規模宅地等の特例は誰が取得するかで適用が変わるため、分け方を決める前に確認する必要があります。
不動産がある相続で金額に最も影響するのが、この特例です。
| 特例・制度 | 内容 | 根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等) | 被相続人の居住用の宅地について330平方メートルまでの部分の評価額を80%減額 | 租税特別措置法第69条の4 | 取得者ごとに要件が異なります。配偶者、同居親族、一定の別居親族で扱いが分かれます |
| 小規模宅地等の特例(その他の区分) | 事業用や貸付事業用の宅地についても、区分に応じた上限面積と減額割合が定められています | 同条 | 区分ごとに要件と限度面積が異なります |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が取得した財産について、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかかりません | 相続税法第19条の2 | 適用には申告が必要です。二次相続を考えると使いすぎが不利になることもあります |
| 配偶者居住権 | 配偶者が自宅に住み続ける権利を取得し、所有権は子が取得する方法 | 民法の規定による | 分割の選択肢が広がります(配偶者居住権とは) |
| 取得費加算・居住用財産の特別控除 | 相続した不動産を売却した場合の譲渡所得の特例 | 租税特別措置法の規定による | 期限があります(相続した不動産を売却したときの税金) |
いずれも適用には申告が要件であり、要件の判断は税理士が行います。特例を使って税額がゼロになる場合でも申告が必要です。申告が必要かどうかの判定手順は相続税の申告は必要?不要?、特例の詳細は小規模宅地等の特例をご覧ください。
期間と費用はどのくらい?
全体で三か月から一年程度かかり、登録免許税として固定資産税評価額の0.4%が必要になります。
期間と費用の目安をお示しします。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 全体の期間 | 相続人が少なく分割も円満なら3〜5か月。相続人が多い、または相続税の申告がある場合は8か月〜1年 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4%。評価額2,000万円なら8万円 |
| 登記事項証明書 | 書面請求600円程度/通 |
| 固定資産評価証明書・名寄帳 | 1通300〜400円程度 |
| 戸籍・除籍・改製原戸籍 | 450円/750円程度/通 |
| 司法書士報酬 | 事務所により異なります(相続登記の費用) |
| 相続税申告料 | 税理士により異なります |
| 当センターの遺産整理業務 | 遺産総額の0.6%(最低600,000円・税別)。登記手数料・司法書士報酬・相続税申告料は別途 |
相続による取得は不動産取得税の課税対象外とされていますので、この点は負担がありません。
当センターは西東京市ひばりが丘北を拠点に、東久留米市・清瀬市・新座市のお客様に対応しています。この地域の不動産登記は東京法務局田無出張所、相続税は東村山税務署が管轄です(新座市など埼玉県内の不動産・税務は埼玉県内の管轄です)。戸籍の収集、名寄帳の取得、財産の確定、分割案の整理までを当センターが引き受け、登記申請は提携する司法書士、相続税の申告は税理士法人みらいの税理士が担当します。
ご自身で登記を進められそうかどうかの判断は相続登記を自分でやる限界でご確認ください。
まとめ:結局どうすればよい?
不動産がある相続は、洗い出し→評価→税の特例の確認→分け方の決定→協議書→登記という順序を守ることが肝心です。
洗い出しでは名寄帳を必ず取得してください。私道やため池の持分は固定資産税が非課税であることが多く、納税通知書には載りません。評価では3つの評価額の使い分けが必要です。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%、相続税は路線価による評価額、遺産分割の公平性は時価が基準になります。
分け方は現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つですが、共有は将来の負担が最も重い選択です。次の世代になると面識のない従兄弟同士の共有になり、売却の同意を取るのが困難になります。
そして最も重要なのは、分け方を決める前に税の特例を確認することです。小規模宅地等の特例は誰が取得するかで適用の可否が変わります。決めてから相談して「その分け方では使えない」と判明する事例が実際にあります。
相続登記は3年以内の申請が義務です。不動産がある相続は関係者が増え、順序の判断も必要になりますので、早めにご相談ください。初回相談は無料です。平日9:00〜18:00、042-439-6523へお電話ください。
▶ 分け方を決める前に、税の特例を確認しましたか?
不動産の洗い出しから評価、分割案の整理までを当センターが引き受けます。登記申請は提携する司法書士、相続税の申告は税理士法人みらいの税理士が担当し、順序を間違えないよう一本で管理します。
西東京市ひばりが丘の相続サポートセンターなら、戸籍収集から遺産分割・不動産名義変更・相続税申告まで、税理士・行政書士・司法書士が連携してワンストップで対応します。初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 不動産がある相続は何から始めればいいですか?
不動産の洗い出しから始めてください。固定資産税の納税通知書だけでは不十分で、不動産所在地の市区町村で名寄帳を取得し、非課税の物件まで含めて確認します。私道やため池の持分は固定資産税が非課税であることが多く、納税通知書に載らないためです。あわせて登記事項証明書を取得し、正確な所在・地番・地積と権利関係、抵当権の有無を確認します。複数の市区町村に不動産がある場合は、名寄帳を市区町村ごとに請求する必要があります。
Q. 不動産の評価はどの金額を使えばいいですか?
場面によって3つを使い分けます。相続登記の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。相続税の申告では、土地は路線価方式または倍率方式による評価額、建物は固定資産税評価額を用います。遺産分割で相続人の間の公平を考えるときは、実際に売れる金額である時価を基準にするのが合理的です。一般に水準は固定資産税評価額が最も低く、時価が最も高くなる傾向があります。固定資産税評価額で相続税を判定すると誤りますのでご注意ください。
Q. とりあえず兄弟の共有名義にしておくのはどうですか?
将来の負担が大きくなるため、できる限りお避けいただくことをおすすめしています。売却には共有者全員の同意が必要で、一定の行為には持分の過半数の同意が必要です。さらに共有者が亡くなるとその持分が相続され、権利者が増えていきます。ご兄弟のうちは連絡が取れても、次の世代になると面識のない従兄弟同士の共有になり、同意を取ることが困難になります。誰も住まないのであれば換価分割、住む人がいるのであれば代償分割をご検討ください。
Q. 分け方を決める前に相談したほうがいいことはありますか?
小規模宅地等の特例が使える分け方かどうかを、必ず先に確認してください。租税特別措置法第69条の4の特例は、被相続人の居住用の宅地について330平方メートルまでの部分の評価額を80%減額できる制度ですが、取得者が配偶者か同居親族か別居親族かによって要件が異なります。分け方を決めてから税理士に相談し、その分け方では特例が使えないと判明する事例が実際にあります。配偶者の税額軽減も分け方に左右されますので、分割前の確認が重要です。